「鉄娘な3姉妹」と共に消えゆく寝台特急を悲しむ 富士・はやぶさ


寝台特急「富士・はやぶさ」に乗ってきました。

戦後の復興や高度経済成長を支えブルートレインとして親しまれてきた寝台特急も今や廃止の危機。飛行機や新幹線、格安ホテルの台頭などで利用客が減り、設備は老朽化。東京駅を発着する最後のブルートレインとしてがんばっていた「富士・はやぶさ」も、2009年3月14日のダイヤ改正で廃止となってしまいました。




東京と九州を結び、昭和の時代を支えた「富士・はやぶさ」の最後の勇姿を見ようと、廃止直前は連日満員御礼。ラストランには東京駅に3000人のファンがつめかけたとニュースになってましたが、この「富士・はやぶさ」は松山せいじ先生の「鉄娘な3姉妹」でもプレ読み切りと第5話でなんと2回もピックアップされています。読み切りの方は実際に乗車した様子を描き、第5話はラストランの日の取材に基づいて新幹線で列車を追いかけるという話になっています。松山先生は福岡県出身ということでかなりの思い入れがあったんじゃないでしょうか。




名古屋駅4番線。名古屋駅を発着する寝台特急も「富士・はやぶさ」が最後です。





まずは車内探検ということで先頭には客車を牽引する機関車。






号車によって通路が海側と山側で変化します。カーテンやモケットの色にもバリエーションがあるようでした。

この日は廃止2週間前の2月26日でしたが、廃止が決まるまではガラガラだったという開放寝台もほぼ満席でした。この時間帯はすでにカーテンが閉まっているところが多かったです。乗客を見るとほとんど40歳以上限定という感じで心地のよい緊張感に包まれていました。


通路側に設けられている折りたたみイス。深夜になるまでビールを片手に車窓を楽しみながら談笑している方もたくさんいらっしゃいました。




そして今晩寝泊まりする寝台がこちらになります。

わずかなスペースではありますが、鉄道という公共の場で一夜に限り自由に使える俺の城だと思うとなんだかワクワクしてきます。浴衣に枕、シーツと毛布、それからハンガーがセットされていました。床には人数分のスリッパがあります。


上段はこんな感じ。見てようやく気がついたのですが、上段って窓が存在しないんですね。通路のイスになんでこんなに人がたくさんいるんだろう、と思っていたのですが、窓がないからみんな下に降りてくるんですね。開放寝台といえばたまたま一緒になった人と「どこへいく」とか「あそこはいいよねー」みたいに盛り上がるのも楽しみの1つで、ほとんどひよっこ同然に私にも対等に話していただけました。




うらら。




中には個室もあります。

A寝台1人用個室「シングルデラックス」。この時期に切符を取るのはかなり大変だったんじゃないでしょうか。


B寝台1人用個室「ソロ」。こちらは開放寝台と値段が一緒なので昔から人気があったそうです。




現在ではまず見かけることのなくなった飲料水。


このように小さい封筒のような紙をコップ状にして水を入れます。




こちらの洗面台も登場時からのままだそうです。




「富士」と「はやぶさ」の連結部。


「富士」と「はやぶさ」は元々別の列車だったのが、近年統合して運行されていました。門司駅で切り離して「富士」は大分へ、「はやぶさ」は熊本へと向かいます。




最後尾の窓からは夜の闇に消えていく線路が見えました。




写真を撮ったりお話をしたりで、気づいたらもう大阪。午前1時すぎです。


寝台にベッドメイキングをしてカーテンを閉めてみました。

実際に横になってみると結構狭いです。寝返りをうつのも苦労します。そして線路から客車に伝わってくる揺れがダイレクトに身体に届くのでなかなか寝付けませんでした。普通の座席に座っているときの車両の揺れって、まるでお母さんの腕の中にいるような心地よさを感じる時もありますけど、寝台で寝るのは慣れが必要みたいです。とはいえ、横になれるのは座席とは比べものにならない快適さで、次第に寝台の揺れに溶け込んでいけました。




翌朝になりまして時刻は5時半くらい。早朝最初に停車する広島までの利用だったのでこのまま揺られて九州まで行きたいという衝動を必死に抑えてデッキからホームへ降ります。




ヘッドマーク。

新幹線ならあっという間についてしまう距離も寝台特急なら日常とは違う特別な空間へと変わります。車窓から流れる灯を眺めながら、たまたま一緒になった見ず知らずの人と旅や鉄道について語り合う。ここには日本人が昭和の時代に忘れてきてしまった「旅」が確かにありました。





さよなら、富士・はやぶさ。

ありがとう、富士・はやぶさ。


お疲れ様でした……。

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