那珂ちゃんや文月が沈んだトラック島空襲の凄まじさを見てきた


トラック諸島 夏島(左端)と秋島(右)

艦隊これくしょん2015年冬イベントの期間限定海域「迎撃!トラック泊地強襲」が開催。トラック泊地にやってくる敵艦隊を迎え撃つ作戦となる本イベントのモチーフとなったトラック島空襲の戦跡を巡りその凄まじさを見てきた。

連合艦隊の本拠地トラック泊地へ


Google Mapsで表示したトラック泊地。

連合艦隊の本拠地が置かれた太平洋の一大拠点で日本海軍にとって真珠湾的ポジションだったトラック諸島。現在はミクロネシア連邦のチューク諸島(Chuuk Islands)となっている。サンゴによってできた環礁(Truk Lagoon)に囲まれ内側に複数の島がある。



一番人口の多いかつて春島と呼ばれたウエノ島(モエン島)。

当時日本が建設した飛行場と同じ場所がチューク国際空港としてトラックの玄関口になっている。


戦跡だらけの州都・春島


春島のブルーラグーンリゾート。

ダイビングショップとホテルやレストランのあるブルーラグーンリゾートの場所はかつて水上機基地があったそうで、今でもトーチカや防空壕などが敷地内の至る所に残っている。



機銃や折れ曲がったプロペラなどで慰霊団によるモニュメントも建てられている。



中心部へ向かって歩いて行くとあちこちに防空壕が掘られていて、地元の人に雑な英語で話しかけていろいろと見せていただいた。



ザビエル高校。

春島の東寄りにあり海軍通信所だったザビエル高校は70年以上前の建物が現役でハイスクールとして使われている。真っ赤な窓は分厚い鉄窓で、中に入ると厳重そうな鉄の扉があり刑務所かと思うくらいで、他には不自然に通路が曲がっているところなどから当時の軍の施設だったことがしのばれる。



屋上に上るとトラック空襲で米軍によって落とされた爆弾で破壊された部分の補修箇所がいくつか見られる。



中に入ると恐らくわざと補修せずに残した部分を見ることができた。



春島北東の灯台だった建物を見ると艦載機からの無数の機銃の跡から攻撃の激しさが伺える。



灯台の近くに砲塔が置いてあり、「ARMSTRONG(アームストロング)」という文字がかろうじて読めた。

戦跡の歩き方によると、装甲巡洋艦・春日、日進が装備していた20cm砲で、

日露戦争でバルチック艦隊を破った歴史的な砲がこんな太平洋の島で野ざらしになっている姿が見られるのがまさにトラック泊地と言えるだろうか。

こういうのは日本政府などが交渉してきっちり管理できるようにしてほしいのが本音だが、現地で地権者を主張する人が観光客から5ドル徴収するなどして野ざらしながら観光資源としてそれなりに管理されているのであれば現実的な保存手段なので「まあいいか」と納得してとりあえず先に進む。

トラック諸島には、かつて軍艦に搭載されていた旧式の砲が防衛のためにたくさん移設されているようで、トラック諸島の至る所で見ることができた。


あ、ちなみにトラック泊地は郊外だとたまに全裸や半裸の幼女が「コンニチハ!」「シャシン!シャシン!」と声をかけて寄ってくるパラダイスでございました!


トラック泊地の中心・夏島


日本統治時代に最も栄えていたのが夏島(トノアス島・デュブロン島)。

上の写真では、夏島の南側に1万トン桟橋が残されている。
※重油タンクの近くで給油桟橋と呼ばれ燃料の揚陸桟橋でもあったそうだが、現在のこの桟橋は恐らく戦後に建設されたものである。



ザビエル高校に夏島付近で日本の船が狙われている空襲の写真もあった。



海軍病院の跡。



海軍通信隊のあった場所のようで現在は小学校に。

防空壕や先ほどの病院跡も70年経った今は子どもたちの遊び場になっている。



第四艦隊司令部の防空壕。

他には民家の一部になった台湾銀行、発電所壕、公園跡、空襲の爆弾や炎上した熱で歪んだオイルタンクなど様々な戦跡が残っていた。かつては要人をもてなした料亭もあったようでどこまで再現してるか知らんけど、かわぐちかいじ氏の「ジパング」に描かれていたりする。




別の日に再び夏島を訪問した際はジャングルをかき分けて登山し砲台と洞窟へ。

南の国に行って生まれて初めてスコールの洗礼を受けることになり、カメラが水没しないか気になって泣きそうになりながらついていったら、

途中でガイドが道に迷いやがって「おい、ふざけんな!」と思うシーンも。

まあ、ガイドが迷うくらいのジャングルを進まないと行けないあたりで道の険しさを察していただければと。


飛行場のあった竹島


島のほとんどが滑走路だった飛行場の竹島(エテン島)。

70年経って島の端から端まであった滑走路は完全にジャングルに戻ってしまっている。



太平洋戦跡紀行 ペリリュー・アンガウル・トラックによると海軍士官クラブと書かれていたが司令部とも言われているようでどっちかわからないが竹島内に廃墟が残っている。

頑丈なコンクリート部分はほとんどが残っていてさすが軍関係の施設といった感じで、爆弾が落ちた部分はぽっかり穴が開いて空を見上げることができた。



隣の発電所跡にも天井で爆発したような跡が。


戦艦錨地に残る武蔵係留ブイ


ウィキペディア・コモンズより。

春島と夏島の間に戦艦錨地があり、大和と武蔵が並んでいる有名な写真が撮られたのがここトラック諸島だ。



戦艦錨地に武蔵係留ブイが残されている。

詳細がよくわからないけど目印の浮きを固定するためのコンクリート?


空襲で多くの艦が沈んでいった


おびただしい数の沈船マップ。

トラック島空襲で連合艦隊の主力は事前にパラオに退避して難を逃れたが、那珂、阿賀野、香取、文月、舞風、太刀風、追風を始めとし、航空機、タンカー、商船などが大きな被害を受け、海軍の一大拠点を失うと共に終戦まで孤立したトラックは断続的に空襲を受け飢えにも苦しんだ。



沈船から引き上げられたビール瓶やガスマスクなどの遺品(ザビエル高校展示)。

現在は多数の沈船を求めて欧米や日本からダイバーが集い観光資源となっている。那珂ちゃんなどは環礁の外でやられたので深すぎて見ることはできないが、文月は今でも潜れば見ることができ、伊168と同型の伊169なども姿を見ることができる。ただし、シュノーケリングでも見られる零戦など一部を除くとどれも30~40メートル級で上級者ライセンスが必要で非常にハードルが高い。

『68年前の戦場へトラック諸島でDIVE! ~駆逐艦 文月(FUMITSUKI)~ 』
たまたま宿が一緒だった人が文月も何度も潜っていると写真を見せてもらったので紹介。


トラック泊地への道


グレートサークルマッパーで作成。

TKKと書いてある場所がトラック諸島(ROR: パラオ、GUM: グアム)。フィリピンやラバウル、真珠湾などの間にある重要拠点であることが地図からわかる。

トラックまではグアムで乗り継ぐ必要があり、グアムから先に行くと10万以上する航空券ザラみたいだがユナイテッド航空の特典航空券を使って空港諸税63.1ドルで済んだ。

「地球の歩き方」など定期刊行されているガイドはなく日本語での情報が絶望的に少ないが、日本人宿はあるのでスカイプ電話をかけてなんとかした。ホテルのWi-Fiが回線速度は10Kbps.とかだったので事前に地図をキャッシュしておきメールチェックくらいしかできないと思った方がよい。

戦跡ツアーはダイビングショップがやってるので前日に英単語並べて予約すればOKで春島内や各種島ツアーなどがある。ただし、春島の奥地にある戦跡は安いツアーじゃ連れて行ってくれないので、現地の人と交渉して1人10ドルなどで連れて行ってもらった。


意外と深い日本との関係


ザビエル高校に展示される沈んだ零戦52型のスケッチ。

こんな感じで、戦跡と空襲の爪痕を見ていくとトラック諸島のあちこちが要塞化され海軍の一大拠点であった部分と空襲の凄まじさの両方を体感することができた。



トラックやチュークなんて名前は艦これを始めるまでまったく知らなかったが、ミクロネシア連邦と日本の関係は意外にも深い。

街を歩くとスクールバスやショベルカー(コマツ製)、ダイビングショップの発動機(ヤマハ製)に日本のODAのマークがたくさん貼ってあり、ザビエル高校も日本企業が補修した記念碑が残されていた。

独立時の初代大統領は日系人で、どこに行っても「ハーイ!」「コンニチハ!」と声をかけられなぜか写真撮影を求められ、日本人を騙そうとする人が多い東南アジアとは違い、ホイホイついていっても大丈夫だったし、戦跡を案内された以外でチップをねだられることもなく、その辺の民家の人になぜかココナッツをおごってもらったりしてとてもやさしくとても親日的だった。

それにもかかわらず日本人観光客はほとんどおらず、他に見かけたのは同じ宿の沈船ダイバーを除くと1家族しか日本人を見なくてとても残念だった。

日本人大好きなマグロやカツオの漁業料やオーストラリアへの船の通行料も莫大な量を払っており、ミクロネシア連邦の最大の収入源はアメリカの援助だそうだが、日本との関係はけして小さいものではないので、艦これをきっかけとして太平洋戦争70周年記念の2015年、トラック諸島のことを少しでも知ってほしいと思って本記事を執筆した。

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◆告知(現在廃版)

冬コミの「海外艦光」に続いてトラック泊地本作成予定。

追記

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