川原湯温泉駅
2020年に完成を予定している八ッ場ダムに沈むことになる川原湯温泉を訪れてみた。八ッ場ダムって建設中止になったんじゃなかったっけ?と思ったら、民主党政権の一時期に転換しただけで結局建設することになったようで。
かつて常磐線特急だった成れの果て。
4月頭に軽井沢からバスで万座鹿沢口駅に行きそこから吾妻線の終点・大前駅に行こうとしたら、接続が悪かったのでどこか行けるところはないかと探したら、ダムに水没する川原湯温泉に高台の新駅ができた話を見つけたので、行ってみることに。
天空を仰ぐ真新しい橋すげえ!と思ったけどダムに沈むからこんだけ高いんだなと気がついたらちょっと切なく。
小さな駅舎に巨大な橋が目立つ川原湯温泉駅に到着。
調べてみたら2012年の乗降客数は1日24人で群馬県で最も少ない駅のようで。この駅にとって今日の1/24なのか、と思ってしっかりと自分の足を踏みしめてみる。
徒歩で川原湯温泉の入口をくぐる。
川原湯温泉は八ッ場ダムに沈む予定のため現在代替地へ移転中で、この時営業していた旅館は1軒か2軒だけだったようで。
わかりにくいけど中央のやや左が川原湯温泉駅で中央のやや上が川原湯温泉。
建物の一部はすでに崩されて土台だけが残されていた。
残骸の壁には「吾つま恋し麦酒冷えてます」などと営業中に貼られていたと思われる張り紙がそのまま残っているところも。
玉湯という共同浴場がまだ残っていて2014年3月31日で閉館する予定が6月30日まで延長していたようで。成分を見ると硫化物がメイン。
ここまで誰ともすれ違わずひっそりとしていたが、川原湯神社の鳥居をくぐった足湯に人影が。
温泉卵が作られているのを見て、まだ温泉地としての営みが続けられているんだとなんとなく実感。
神社には咲きかけの桜。
坂を上って行くと代替の神社なのか別の神社なのかよくわからない建物が。トンネルの方に進んでいくと川原湯温泉の代替地があるようで。
そして、川原湯温泉を外れると、JR吾妻線の新ルートと川原湯温泉の新駅を発見!
間違いなくJR川原湯温泉駅と書かれている。
隣の民家への道なのか新駅の目の前まで歩いて行くことができた。
先ほどの古い川原湯温泉駅より80メートルほど高い場所にあるようで、駅舎やホームの他に付け替えられる線路やトンネルも見られた。駅舎からはダム湖が一望できそう。
付近には代替地建設の看板も。
車が何もない斜面で停車していたので何かと思ったらカモシカがいてのどかな感じ。
往路は急いでいたのでほとんど素通りしてしまったが、解体されて土台の基礎の部分だけが残されている建物がかなり多いことに気がついた。ダムに沈むことになるかつて温泉街を形成していた建物の多くは廃墟になることすら許されない。たとえまた八ッ場ダムの計画が中止になったとしても、ここに帰ってくることはできないのだ。
川原湯温泉が移転する打越地区のイメージイラスト、だがすでに壊れかけている。
斜面のほとんどの建物は取り壊されて遺跡のようになっていた。
川原湯温泉の建物では比較的新しめの郵便局。
土台だけになった温泉街の構造物から湖面1号橋を見上げる。
80メートルくらいの高さの大半が八ッ場ダムの水に浸かってしまうようで、この辺り一体は完全に水没してしまうというのがやっとイメージできた。
ありがとうございました 川原湯温泉
川原湯温泉駅に戻り大前行きの列車に乗車。
ちなみに、高崎方面には日本一短い7.2メートルの樽沢トンネルがあるが、こちらもルート変更でなくなってしまうようで。
川原湯温泉での滞在時間はわずか42分しかなく新駅まで片道15分くらいとかなりタイトだったがなんとか見ることができた(めっちゃ走った!)。いずれこの風景もなくなってしまうと思うと、日帰り温泉くらい入れるように時間を取ればよかったと後悔。
川原湯温泉は八ッ場ダムに沈むことになるので移転が進められているが、移転すると言ってもいきなり全部移動できるわけではなく、延期があればその分中途半端で営業し辛い時期が延び、その後も新天地で客が入るかどうかはわからない。ダム建設というと税金のムダだとか住民と行政の対立ばかりが話題になるが、八ッ場ダムでは60年かけて進めた計画を突然中止したので中止への反発もあり、ダムで温泉や集落が1つなくなるというのはいったいどういうことかなんとなく理解することができた。