小田急との箱根山戦争は見る影もない。3000円の箱根旅助けで西武の廃墟になりかけた観光地を安く回る 【温泉むすめ 箱根彩耶】


箱根といえば、ロマンスカー、箱根登山鉄道、海賊船などのを乗り継ぐゴールデンルートが有名。これらの乗り物に乗れる小田急の箱根フリーパスに対抗した西武の「箱根旅助け」というもう1つのフリーパスが存在することを、箱根を訪れる中で知っている人は果たしてどのくらいいるのだろうか?※本記事は2021年8月訪問


小田原駅で温泉むすめ箱根旅助けを買う


小田原駅東口にある伊豆箱根バス小田原駅前。

本記事では小田急と書いたら小田急電鉄と箱根登山バスなど小田急グループの総称、西武と書いたら西武鉄道と伊豆箱根鉄道など西武グループの総称を示す。



箱根旅助けは2021年6月10日から温泉むすめ箱根彩耶タイアップをおこなっており、イラストが入ったポストカードサイズの紙を渡された。

そして、限定300個という缶バッジがなぜかまだ残っていた

箱根旅助けの裏目に記載されるシリアルハンバーは37、同行者は38だったので、もしかして6月10日から約2ヶ月で38枚しか売れてないのだろうか。温泉むすめや箱根彩耶の人気がないんじゃなくて、みんなまじめに自粛してるってことなんだろう、きっと。

ちなみに、発売当初に熱海で購入した知人は255番だったらしい。いったい何枚印刷されてどういう配分になっているのか気になってしまう。




箱根旅助けで移動できるルートはこのようになっている。

箱根旅助けは大人1人3000円。2日間で西武グループの伊豆箱根バスが乗り降り自由で小田原から箱根を経由して熱海と湯河原まで行くことができる。ただし執筆時点で湯河原線は運休中。

下記で紹介する、箱根水族館、芦ノ湖遊覧船、駒ヶ岳ロープウェー、十国峠ケーブルカーに無料で乗ることができて、バスに1回も乗らなくても非常に簡単に元を取ることができるので便利だ。



小田原駅からのバス停は5番線となり、大涌谷経由箱根園行きのバスに乗車した。

なお、オレンジ色やエヴァンゲリオンタイアップの伊豆箱根バスは箱根旅助けで乗ることはできないので要注意だ!絶対に間違えるなよ!




2021年7月31日までと8月1日からの伊豆箱根バス時刻表。本数がだいぶ増えて30分に1本程度になった。




小田急の箱根登山鉄道や箱根ロープウェイを横目に箱根湯本や大涌谷を経由して箱根園へ向かった。

小田急(東急)と西武はかつて箱根の観光開発で雌雄を争い箱根山戦争と呼ばれるほど熾烈だったそうだ。バブル崩壊や2004年の西武の上場廃止などで大規模な投資ができなくなった西武の箱根の観光地は果たしてどのようなものなのか?


箱根水族館


箱根園にある箱根水族館は日本で一番高いところにある水族館。

入った瞬間に「うわ、昭和にできた地方の潰れそうな水族館だ」となって盛り上がる。

入場料は大人1人1500円である。地方の巨大水族館と比べると関東の水族館はどこも規模が小さいのに割高でしかたないのだがここもなかなかのものである。また、この水族館のみ乗り物ではないので箱根旅助けでは1回しか入場できない。

目玉は沈没船の巨大水槽となり、この沈没船が西武グループの象徴に見えて仕方がない。昔は「小田急の海賊船を沈めてやる!」というイメージだったのかもしれないが。



温泉アザラシめっちゃ目つき悪い!

昔は土日祝はアザラシショーが3回あったらしいのだけど、コロナで11時と13時の2回しかなかったので注意。

ショーを進めながら飼育のお兄さんが「アザラシのショーは地味でー」と自虐的に語っていたのが頭から離れない。


芦ノ湖遊覧船


伊豆箱根鉄道の芦ノ湖遊覧船は関所跡→元箱根→箱根園→関所跡といった感じで芦ノ湖の南あたりを周遊する。

1周すると40~45分で1480円。関所跡→元箱根が400円、関所跡か元箱根から箱根園が780円であった。ちなみに、芦ノ湖を縦断する小田急の箱根海賊船は片道1200円、往復2220円である。

かつては北の湖尻まで行っていたが新型コロナウイルスにより当面の間運休中となっている。



芦ノ湖遊覧船は小田急より先に芦ノ湖で遊覧船をやっており、安定性のある双胴船をいち早く導入して当初は西武の方がシェアが高かったらしい。ディズニーをヒントにしたきらびやかな海賊船が走る今では想像もできない話だ。



双胴船は今となっては特に特徴のない船に見えるので「やっぱり海賊船乗ってみたいなあ」と木造船っぽく建造された船を横目に双胴船から景色を見ることになる。

ただ、西武は小田急に先駆けて箱根を開発しただけあり、後述の箱根関所や箱根神社の桟橋は西武の方が近くて便利であり、箱根山戦争の歴史を桟橋の位置からも見て取ることができる。



展望デッキで座って芦ノ湖周辺を見下ろせるのはよいのだけど、ひさしがないので夏はめっちゃ暑い。

マイカーで来る家族客が乗っているのか最上階には思ったよりは客がいるものの、階下の室内は埋まらずやっぱりガラガラである。



ちなみに、現在の湖尻ターミナルは閉鎖されこのような廃墟になっている(2019年9月撮影)。


箱根 駒ヶ岳ロープウェー




駒ヶ岳ロープウェーは往復1600円で20分間隔で運行。ちなみに、長野県の中央アルプスにも同名のロープウェーがある。

天気は悪かったものの、芦ノ湖を見下ろすことができ、少し歩くと小田原や東京方面など相模湾ビューもある。



廃墟になりかけている駒ケ岳頂上駅

昔は最上階が屋内展望台だったのだろうけど、階段が途中で立入禁止になっていて入ることができない。

2020年10月5日に機械トラブルで駒ケ岳ロープウェーが停止し、客はゴンドラから救助された後に歩いて下山するハメになったらしいが、老朽化した施設を見て「これは止まっても仕方がない、むしろなぜ今も動き続けられるのだ」という感想しか出てこない。



昭和40年頃、駒ケ岳の山頂に400メートルの巨大なスケートリンク施設「駒ケ岳スケートセンター」があったそうで、その後はスノーランドというスキー場に姿を変えるも1996年に閉鎖。



今ではその跡すら確認することができなかった。人工物は箱根元宮と展望台とそれらを結ぶ歩道しかない。

飛ぶ鳥を落とす勢いの戦前・戦後・高度経済成長時代の西武を見てみたかった。


温泉むすめ箱根彩耶コーナー



関所跡港はこのようになっていた。よく見たら夕立や時雨の玖条イチソ先生じゃねえか!箱根に来てよかった!

箱根園も展示があるらしいけど見るの忘れてしまった。グッズやお土産品が売れているのかどうは謎である。


十国峠ケーブルカー


十国峠ケーブルカーは熱海と箱根を結ぶ静岡県道20号熱海箱根峠線の途中にある十国峠レストハウスから十国峠展望台を結んでいる。

営業時間は8:50から16:50で毎時5、20、35、50分に出発する。往復730円で、箱根から離れた場所にあるからか普通の観光地くらいの価格設定。



三島・沼津方面、伊豆方面、湯河原方面、東京方面などぐるりと一望できる。

あいにく雲がかかって富士山は見えなかった。運がよいとスカイツリーも見えるようである。単純な景色なら駒ケ岳ロープウェーよりこっちの方がオススメ!



バスは1時間に1本しかないので、だいたいは展望台で30分過ごして下山し次のバスに乗ることになるだろう。

今回の旅は私鉄乗りつぶしで十国峠ケーブルカーが最大の目的だったので、ひとまずミッションを達成できてとても満足した。


その他、箱根の目玉観光地

箱根関所・箱根関所資料館


江戸時代に存在した箱根関所は明治時代に火災で消失し、平成時代の2007年に復元された。

「箱根旅助け」を掲示すると500円が400円に20%割引される。芦ノ湖遊覧船「箱根関所跡港」のすぐ隣にあり、未だに港名に「跡」とついているのも歴史を感じさせてよい。

特筆すべき点はないのだけど、大涌谷の箱根町立箱根ジオミュージアムとあわせて箱根近辺の歴史と自然を一緒に学ぶとよい。


箱根神社・九頭龍神社・平和の鳥居


芦ノ湖遊覧船「元箱根港」から750メートルくらい歩くと箱根神社と九頭龍神社新宮がある。



箱根神社 平和の鳥居。

芦ノ湖川には平和の鳥居があり、観光客が並んで順番に記念撮影をしているので20分くらいかかって無駄に時間を使ってしまった。まじめに撮影するなら早朝に来るか船を借りて湖上から撮影するしかないだろう。

源頼朝も信仰したとされる1200年の歴史を持つ神社で巨大な杉がある意味一番の見どころなのだが、正直なところ、どこにでもありそうな地方の一宮クラスの神社なのでスルーしてもよいかもしれない。


熱海・来宮のバス停


Google Mapsより、伊豆箱根バスの熱海-元箱根路線のうち熱海から来宮駅あたりのバス停。

熱海の海に面した旅館へアクセスしやすいので、お高い箱根には泊まらず十国峠ケーブルカーを利用しつつ熱海の温泉に泊まるのはオススメ(箱根は四季倶楽部など安い温泉旅館もあるけど)。



注意する点としては、コロナのせいか箱根園からは発着しておらず元箱根が始発になるところ。

箱根園と元箱根を勘違いしていて、16:07元箱根発の熱海行き最終バスに乗れず、箱根園からバスで小田原駅に戻ってそこから鉄道で熱海に向かうハメになり、418円余計な料金がかかってしまったのでマジで気をつけような!


箱根旅助けを使わないといくらになったのか


2日目の復路で用いた、箱根園始発、元箱根経由小田原行きのルート。大涌谷経由より時間がかからない。小涌谷や箱根湯本を経由しないもっと短絡のルートもあるけど夕方は運行がなかった。



元箱根バス停の目の前にある伊豆箱根バス箱根営業所(元箱根案内所)。バスの待合室として使えると思ったら16:45で閉鎖!

2日間で使った伊豆箱根バスの正規運賃は、小田原駅-箱根園の往復で2660円、熱海→十国峠登り口→箱根関所跡が650+680円、箱根関所跡-元箱根が180円、元箱根-小田原駅が1200円となった。

西武の箱根旅助けの価格は2日で3000円。箱根水族館、芦ノ湖遊覧船、駒ケ岳ロープウェーを利用するだけで4500円以上かかり、伊豆箱根バスと十国峠ケーブルカーを全部足したら10680円になり、3.5倍以上のコストパフォーマンスを達成することができた。割引施設はほとんど利用することができなかったが、箱根関所で100円引。


箱根フリーパスと箱根旅助け

箱根フリーパスは5000円に値上げ

対する小田急の箱根フリーパスは2021年10月1日から小田原発のものが大人4600円から5000円に値上げされ(新宿発5700円→6100円)、西武の箱根旅助けとは2000円差となる。

箱根フリーパスはやはり箱根登山鉄道の箱根登山電車と箱根登山ケーブルカーを使えるのが魅力で、箱根登山バスで御殿場と三島に行くこともできる

前述の通り、箱根旅助けは乗り物だけでなく水族館という箱物にも入ることができ、箱根関所跡と箱根神社最寄りの元箱根の桟橋は西武の方が便利な位置にあるのも見逃せない。

しかし、子供料金は箱根フリーパスは新宿発が1500円と10月1日以降も据え置きの激安で、箱根旅助けの子供料金1500円と同額となり、海賊船などの乗り物を考えるとファミリーユースでは圧倒的に分が悪くなる。

箱根フリーパスは新宿発だと乗車券分の差額は1100円しかなく、新宿-小田原の片道が550円相当となる(ロマンスカー特急料金1000円は別)。西武の箱根旅助けは当然新宿-小田原の料金は含まれていないため、コロナ以前価格580円くらいで小田急の株主優待乗車券を新宿西口大ガードの金券屋や新宿サブナードの自販機などで購入する手間が発生してしまうので、「やっぱり箱根フリーパスでよいのでは?」となってしまう。箱根旅助けには3日券がないのも痛い。


箱根フリーパスも箱根旅助けもライバルのバスは使えない

小田急の箱根フリーパスは箱根登山バスしか乗れず、西武の箱根旅助けは伊豆箱根バスしか使うことはできない。どちらのバスもある程度路線がかぶっているのだが、相互に利用することはできない。

実際に箱根フリーパスを持っている人が伊豆箱根バスに乗ろうとして、運転士が制止し箱根登山バスの場所を教えてあげる場面を目にした。相互利用は検討されているそうだが、実現には至っていないので当分望みは薄そうである。


箱根旅助けは案内所5箇所でしか買えない

箱根旅助けは小田原駅、熱海駅、湯河原駅、箱根園、元箱根の5箇所の案内所でしか買うことができず、各施設や駅では絶望的に案内されていないので事前に調べていないとまず存在を知ることができない(この他、セブンチケットで購入可能)。

現在は西武鉄道の窓口や券売機でライバルの箱根フリーパスを購入できるため、西武グループのはずの伊豆箱根鉄道グループにとってはなかなか厳しいものがある。


箱根旅助けを使ってる人マジでいない問題

土日の2日間、箱根旅助けを使って箱根周辺を観光したところ、他に箱根旅助けを使っていると思われる人は1人しか見かけなかった(セブンイレブン発券タイプ)。

1つの施設で1500円前後かかってしまうので、車やバイクで箱根を回る際にバスに乗らなくても箱根旅助けを使って観光すればお得なことをもっとPRできればよさそうに見えるがそうはなっていなかった。

もしかしたら伊豆箱根バスが自治体から補助金などを受けている関係でバスを使うことを前提にしたフリーパスになっているので、案内所以外で積極的な宣伝ができないのかもしれないが、恐らく現場も幹部社員も疲弊して改善案を上げたり作業する余力も予算もないのだろう。

箱根旅助けが使える施設でも販売できればもっと売れそうに思うけど、箱根登山バスが使えないなど説明するのが面倒できっぷ売り場では対応できないのかもしれない。



小田急は100億円アニメのエヴァゲリとタイアップできるけど、対する西武は人気あるのかないのかよくわからない温泉むすめ

タイアップする作品の戦力差からもかつての箱根山戦争の壮絶さは見る影もなくなってしまったが、ディープな箱根を安く観光したい人は箱根旅助けを使ってかつての西武のすごさに思いを馳せてみよう!
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