【同人誌の納本は国民の義務】コロナでコミケ参加者が減って売上が厳しいので国会図書館に納本して代償金を請求した。その条件は?


国立国会図書館に同人誌を納本し代償金を交付してみた。本記事では納本の仕方や代償金の請求方法を解説する。


同人誌の納本は国民の義務

日本国内で発行されたすべての出版物は、国立国会図書館法によって国立国会図書館に納入することが義務づけられている。

これは個人がつくった同人誌においても適用されるため、コミケなどでサークル出展する人にとっては納税などと並んで同人誌の納本も「国民の義務」ということになる。



そして、納本すると国会図書館に認知され、「てめえ、新刊出しただろうが、提出せいや、オラァァァァッ(意訳)」といった書類がコミケ後に投げつけられることがある(写真はC99の後)。

ちなみに、「ろけます!」事務局とは……。

出版が斜陽産業とはいえ毎日クソほど新しい本が発行されているのに、同人誌まで監視しているとは国の組織なかなかやるな。


C100の参加者は以前のコミケの半分しかいない


2021年12月の冬コミC99では1日55000人夏コミC100では1日88000人が参加となった。かつては1日20万人前後だったコミケの参加者はコロナ禍により未だに半分程度である。今回の夏コミで久しぶりにサークル出展したけど以前より頒布数が少なくて愕然とした人も多いのではないだろうか。

「コミケ出展者の8割が赤字」というデータが以前話題となったが、同人誌即売会に本を出すにあたって、赤字とは言え出展料や印刷費などをある程度は回収しておきたいと考えるサークルがほとんどだと思う。少しでも赤字を補填する方法として、国会図書館に行う納本は寄贈だけではなく代償金を交付することも可能であることを思い出したので夏コミ後にやってみることにした。

うちの場合は年間収支は毎年赤字なので正直お金はどうでもよいのだが、委託して残った本が自宅に送り返されてくる前に1冊でも在庫を減らしておきたいのでとりあえず国会図書館へ納本へ行こう。今回のコミケでは一次創作のオリジナルと言い張れる同人誌しかつくってないので代償金をもらってもきっとバチは当たらないであろう。


代償金交付に必須となる持ち物

  • 納本する同人誌
  • 印鑑
  • 小売価格を証明する書類(後述)
国会図書館の納本で代償金をもらう場合は以上のものが最低限必要になる。

各省庁や自治体ではとっくに印鑑廃止の方向なのになんで印鑑が必要なのか?と思ったら、そもそも国会図書館は立法を司る国会に属しており、日本国民に利用してもらう他に国会議員の調査研究を目的としているのでわざわざ国会の隣に建っているようだ(秘書やその更に下っ端しか来ないだろうけど)。国会議員のおエライさんは各省庁などに印鑑廃止しろと散々言っていたのに、そのお膝元の国会は印鑑廃止になっていないようで、その本末転倒ぷりに本当に頭きちゃうけど今回の記事とは関係ないのでここまでとする。


同人誌を持って国会図書館の裏へ行く


通常、国会図書館で本を閲覧する時は、東側にある入口から入る。

最寄り駅は東京メトロ 半蔵門線・有楽町線・南北線の永田町駅で有楽町線の2番出口(新木場側)が一番近い。丸ノ内線・千代田線の国会議事堂駅からもわりとすぐ歩ける。



しかし、納本する時は通用口の西口から入るのだ。



明らかに職員用入口といった感じでここから建物内に入れる。

受付で納本に来たことを伝え、名前や時刻等を書き、入館バッジをもらい、国内資料課の窓口まで歩く。

ちなみに、本の閲覧で先に国会図書館内に入った場合は、案内所で納本したい旨を伝えると国内資料課まで案内してもらえる。


出版物納入書を記入する


国会図書館の出版物納入書の記入見本より。

国内資料課で出版物納入書をもらい個人情報や本の情報を記入する。「発行者(社名)」のところはサークル名を記載し、個人であれば社印と代表者印の2箇所に印鑑を押す。

注意する点としては、納本は東京館と関西館で2冊入れることができるが、代償金は1冊分しかもらえないので関西分を入れて2冊持ってきた時も数量は1と記載する。

コミケなどの同人誌即売会で500円や1000円で頒布している本を、メロンブックスやとらのあななどに税込660円や1320円で委託している場合、小売価格は660円や1320円と記載できる。

1枚で書ききれない時は「書名」のところに「”1冊目の本の名前” 等」と1行分だけ記載して別紙を用意し、数量と小売価格は合計した数を記入する。


100冊以上、小売価格の証明が必要


とらのあなのサークルページ例。

国会図書館への納本で代償金をもらうには条件があって以下となる。
  • 100冊以上印刷している
  • 小売価格を証明する書類
100冊以上印刷しているかは現状は口頭でのみの確認になるので特に何も必要ない。

価格を証明する書類の具体例は以下。
  • メロンブックスやとらのあなのWebサイトで本の値段が書いてあるサークルページ
  • 委託する会社の事前発注メール
  • とらのあなから送り返されたビニール袋と値札がついたままの本
これらを印刷して持っていくか値札付の本をそのまま納本し、実体のある会社と取引があることと本のタイトルと価格が確認できれば問題ないと思われる。

意味のない謎のバーコードだけが印字された6万円の本(亞書)を納本して代償金を繰り返し得ている人が問題になったことが過去にあるので、以前はもっと緩かったかもしれないが現状はこんな感じである。

ちなみに、無償で寄贈する場合は本と出版物納入書だけで完了だったと思う。


代償金は小売価格の50%

納本した民間出版物の費用は「小売価格の5割+送料」を交付してもらうことができる。

今回はコミケなどで500円の本と1000円で頒布する本で、委託では660円と1320円なので330 + 660円 = 990円もらえるはずである。

振込は2ヶ月後くらいにあり、財務省会計センターから「国庫金振込通知書」が届くようである。

「500円ランチ2回分くらいになったか?」と思ったけど、今回は国会図書館まで直接出向いて交通費がかかったので実質得られるお金は雀の涙となってしまった。記事を書くためにわざわざ直接出向いたので仕方がない。


人類の叡智のために同人誌を納本しよう

それでも、国会図書館に同人誌を預けておけば自分が命を賭けて取材してつづった知識が半永久的に残り、いつか誰かの役に立つかもしれないし、仮に自宅が消失しても自分で読み返せるので、納本できたこと自体は満足である。

もう一度言う、同人誌の納本は国民の義務である。寄贈でも代償金交付でもどっちでもいいと思うので、人類の叡智のために納本しよう!

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