タンザニア旧首都ダル・エス・サラーム近郊鉄道のプグ線とウブンゴ線とBRT(Bus Rapid Transit)を利用した。
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ダル・エス・サラームのBRT
Yonas Mchomvu氏の資料より。
2022年時点のダル・エス・サラームでは1路線+支線のBRTが運行されており、新路線の建設も進んでいる。
ダル・エス・サラームの港町で対岸を船で結んでいるキブコニKivukoniから中心街を通って西に向かい、ウブンゴターミナルを経由して終点のキマラKimaraターミナルへ行く路線となっている。
キリマンジャロ付近のアルーシャから夜行列車でダル・エス・サラームに着いた日、BRTでウブンゴターミナルに行き、帰りに近郊路線のウブンゴ線で中心街へ戻ってみた。
ダル・エス・サラーム中心街のCity Counilバス停。
バスは連接タイプと普通のバスタイプの2種類ある。
左がBRTのチケット(右は後述のウブンゴ線)。
入口に有人の券売所があり、自動改札でQRコードを読み取るシステムかと思いきや、ぶっ壊れているのか有人でチケットを確認していたのはいかにもアフリカっぽい。
料金は650シリングで、訪問時は1シリング0.06円だったので39円である。
約10km先のウブンゴバスターミナルに到着。
ダル・エス・サラームのBRTは名古屋の基幹バスのように専用車線があるため渋滞の影響はほとんど受けずに30分くらいで到達。夕方に利用したら車内はかなり混雑していたのでスリなどの軽犯罪に気をつける必要がある。
かなり大きなターミナルながら歩道に出るには高い歩道橋を渡って歩く必要があったので不便そう。
ここから2kmくらい先のダル・エス・サラーム大学があって観光できそうだったが、時間が中途半端だったので断念して徒歩でウブンゴ線の駅に向かった。
ダル・エス・サラーム中心街に近いエリアで建設中のBRTステーション。
専用車線も今は一般の車が走っている。
ダル・エス・サラームの近郊鉄道
近郊路線のスワヒリ時間時刻表
タンザニア鉄道公式サイトより。
タンザニア鉄道(Tanzania Railways Corporation / TRC)のダル・エス・サラーム近郊路線のダイヤとなり、ダル・エス・サラームからプグPuguとウブンゴUbungoを結ぶ2路線が1日6往復運行されている。どの便もダル・エス・サラームを出発し、プグに所要55分、ウブンゴに所要40分で到着、10~20分の折り返し時間を経てダル・エス・サラームへ戻ってくるダイヤとなっている。
6時と18時を0時(12時)とするスワヒリ時間で書かれており、書かれている時刻からマイナス6時間し、マイナスになったら12を足し、午前か午後か判定すると日本でも採用されている西洋の時法にすることができる。
スワヒリ語の翻訳
- Alfajiri: 夜明け
- Asubuhi: 朝
- Jioni: 夕方
- Usiku: 夜
ウブンゴ(Ubungo)線
BRTのウブンゴターミナルとウブンゴ駅の位置関係を示す。
BRTのウブンゴ・ターミナルからしばらく歩くとゴミだらけの芝生に線路を発見。
ダル・エス・サラームは500万人都市らしいが、途中にヤギやニワトリが放し飼いになっておりカオスすぎる。
駅舎や屋根はないものの間違いなくウブンゴ線の終着ウブンゴ駅であろう。
夕方のダル・エス・サラーム発列車は16:40着。近くの屋台でタンザニア風オムレツのチプシ・マヤイ(3000シリング)を食べて時間を潰して戻ってきたが、定刻になっても列車は一向に現れる気配はない。
もしかしたらコロナで運休などしているのかもしれないと周辺にいる人に聞いてもはっきりとした答えが帰ってこない。
おおおお、きたああああああ!!!!!
定刻から20分遅れてようやく列車がやってきた。
よかった!とりあえず、これで帰れそうだ!
終点ウブンゴ駅です。車内にお忘れ物、落とし物がございませんよう、ご注意ください。
しばらくするとディーゼル機関車を切り離してダル・エス・サラーム方面へ回送。
折り返すため機関車の付け替えが行われる。
「おい、お前!こっちに来い!」
写真を撮っていたら高々と声を上げた作業員に呼ばれる。
やべえなあ、撮影禁止で怒られるのかな……・
「どこから来たんだ?」
「ジャパンです」
「ジャパーン オール オーケー!」
謎の理論により、めっちゃ間近で貴重な連結シーンを見せてもらいました!
アフリカの底辺の人はマジでうざいけど、きちんと仕事をして一定の所得がある人はめっちゃ優しいんだよなあ。
機関車の付け替え完了!
ダル・エス・サラームは南アフリカのヨハネスブルグに並ぶくらい治安が悪いらしく凶悪都市と呼ばれている。近郊路線では警察が乗車しており、いきなりリンチされて金品を奪われるとかはなさそう。
ラッシュと逆方向ということもあり3両編成の客車はガラガラだった。
料金は400シリング。24円である。
つり革は燃やされたのかと思うくらいくたびれてる。
16:50定刻から30分近く遅れて列車はウブンゴ駅を出発。
途中maps.meにも掲載されていない駅にも複数停車しながらダル・エス・サラームを目指す。
ほとんどスラム街だろう、これは……。
警察が見張っているとは言え、客車のドアはフルオープン。
南アフリカのヨハネスブルグでは駅に停車するため減速する時に強盗に遭うという話を聞くが、幸いなことにダル・エス・サラームは安全に窓からスラム街を眺めることができるアトラクションと化していた。
長距離列車と同じ線路に合流して標準軌の真新しい高架線路を見上げながら走る。
出発を待つプグ線の列車を横目に出発から40分で暫定終点カマタ駅に到着。
プグ(Pugu)線
蒲田ならぬカマタ駅。
ウブンゴ線の翌日はザンジバル島へフェリーで日帰り。その翌日の朝にプグ線を利用した。
ダル・エス・サラームから南西のプグ駅までは全線で長距離列車と同じ線路を走る。線路は単線のためタブレットの交換が行われる。
客車はインド製でいかにもイギリスの旧植民地といった感じ。
照明は完全に抜かれており、申し訳程度に小さなLED蛍光灯が取り付けられていた。BF型電源コンセントもあるけど使用できるはずもなく。
プグ線の料金は600シリング36円。
車掌から往復分まとめて購入できた。
ホームすらない無名の駅から人が乗り込んでくる。
ジュリウス・ニエレレ国際空港の近くにあるAirport Bus Stop付近にも停車駅があるので、時間帯が合えば鉄道と徒歩で空港までアクセスできそう。
ちなみに、ダル・エス・サラームは交通渋滞がとてもひどくてまったく進まないシーンに遭遇したので、1人の場合はUberでバイクタクシーを利用した方がよい。そのバイクですら動けなくなったので空港方面はかなり時間に余裕を持って動いた方がいい。
プグ駅。
午前最終便の9:15ダル・エス・サラーム発の列車はほぼ定刻で出発し、10:10分にプグ駅に到着するはずが若干早着となった。
プグ線の新駅
プグ駅から1kmくらいのところでは標準軌で建設が進む電化新線の新駅を建設中。
プグ駅から500mくらい歩くと橋があったのでその上から撮影。
プグ駅と標準軌鉄道のプグ駅の2地点を示す。
折り返し時間は時刻表上では10分しかないため、10:20発の列車に乗るため慌てて戻る。
プグ駅のすぐ近くには動物オークション会場があり、ウシがこのように大量に売られている様子を見ることができる。
オークション会場で乗合バスのダラダラに乗ることができるので、片道鉄路でもう片道はミニバスで移動してプグを観光することも可能。
ダル・エス・サラームに戻る列車では農業部門で役所勤めの人がおり、生物の教科書を見せてもらった。
アフリカは中国から多額の農業系援助を受けているので、タンザニア人もその恩恵を受けているのだろう。
客車は確か13両あったと思う。
ボロい三等座席車だけがこれだけ並ぶのは圧巻。わざわざアフリカに来てよかった!
ルールなんてあってないようなものなアフリカでも踏切はさすがに停車するようだ。
カマタ駅には8分も早着で戻ってきた。
新ダル・エス・サラーム駅
暫定終着駅のカマタ(Kamata)駅
プグ線でカマタ駅に戻ってきた。
後ろの客車に乗ってしまったので駅の入口までは客車の間をかなり歩く必要があった。
駅構内は物売りに屋根とベンチもあるけど強い雨風をしのげる感じではないので長時間待つのは辛そう。
シン・ダルエスサラーム駅
新ダル・エス・サラーム駅舎と超高層ビル。
カマタ駅と旧ダル・エス・サラーム駅の間に建設中なのがこの新駅舎。全面ガラス張りで変形してレーザーでも打てそうな形状をしており、まさに「シン・ダルエスサラーム駅」である。
たぶん建設中のBRT駅。
韓国KORAILも関わっているようだ。
最後に途切れている高架がめちゃくちゃかっこいい。
今のダル・エス・サラームを象徴する風景だ。
無法地帯を内包しながら発展することをやまない凶悪都市の今後に期待したい。
旧ダル・エス・サラーム駅
旧ダル・エス・サラーム駅は入れなくなっており完全に廃墟と化していた。
反対側にはTRCの建物があるけど、もしかしてこれが本社?
背後の超高層ビルと比べるとみすぼらしく見える。がんばれタンザニア鉄道!
標準軌の新線は中国とトルコ企業により建設が進み、客車は韓国ヒュンダイ・ロテム、電気機関車はマレーシアと国際色豊か。完成すれば現在のプグ駅は使われなくなるのだろうか。
しかし、アフリカの大地は太陽と砂塵で過酷すぎることに加えて、アフリカ人が長距離の電化鉄路をちゃんとメンテナンスして運用できるとは思えないので10年くらいで不通になるのではないかと予想している。新線が開通したら運行されているうちに2人以上で再訪してみたい。1人でアフリカの底辺観光はつらすぎるので。