横浜で始まった夢の自転車シェアシステム"baybike"がクソすぎる理由


ヨーロッパでは公共交通に対する意識が日本よりはるかに進んでいて、ロンドンやパリなど都市では町中の至る所にレンタサイクルのステーションが設置されており誰でも格安で使うことができる。それに習い日本でも同様の自転車シェアリングシステムの実証実験を全国でやっているが、2014年4月1日から自転車400台、ポート数34という国内最大規模の「横浜コミュニティサイクル"baybike"(ベイバイク)」が始まったので試しに使ってみた。

横浜の自転車シェアリングシステム"baybike"


「自転車のシェアはじめませんか?2014 4/1本格始動」

横浜ランドマークタワーのそびえるみなとみらい地区で開催されていた「みなとみらい21 さくらフェスタ」の一角でbaybikeの看板を発見。


登録にはクレジットカードと携帯電話が必要


まず必要なものとして、料金の決済に使うクレジットカード。これは恐らくどこの国でもだいたい同じだと思うが、横浜のbaybikeは更にE-mail受信可能な携帯電話が必要なようで。


初回登録が結構メンドウ


会員登録は以下の3種類で可能。

・各自転車ポートにある端末
・横浜2箇所の登録カウンタ
ウェブサイト



ポートを利用して登録する場合は、交通系ICカードかおサイフケータイが必要になる。





規約や料金プランを選択するとメールアドレスの入力画面に。

携帯電話のキャリアメールである必要はなくアットマーク以下はgmailなどから選択することができて楽だった。フリーで入力すればどんなメールアドレスでも使える。





クレジットカード情報や本名を入力し、認証に使うICカードやおサイフケータイをタッチして登録させ完了。

ユーザーIDが書かれたメールが届く。


ICカードをタッチして自転車を引き抜くだけ


baybikeのポート。


カードリーダー。


各自転車ポートにあるカードリーダーに登録したICカードかおサイフケータイをタッチすると、使える自転車のポートのランプが点等するので自転車を引き抜く。

ロンドンだと、クレジットカードを入れて手続きし、出てきたレシートに書かれた番号を使う自転車のポートに入力する必要があるが、baybikeは初回登録が面倒ながらいったん登録してしまえばタッチするだけで非常に簡単に借りられる。


一時駐輪用のチェーンキーが付属


台北で増殖中のYouBike。交通ICの悠遊カードを使う。

baybikeを借りるとメールで自転車番号と鍵暗証番号が送られてくる。鍵番号は利用する自転車についているチェーンキーの番号で、ちょっとした買い物で盗難されないようカギをかけて一時駐輪できるので便利。チェーンキーがついている自転車シェアリングシステムは初めて見た。


自転車は3段ギアで非常に軽快


早速クイーンズスクエアのブロックを一周してみたら、自転車は軽く3段ギアもついていてなかなか快適。

ヨーロッパだと治安が悪くて壊されないようにするためか自転車がかなり重い作りになっているのでこの点は日本がトップではないかと思う。



ただしサドルの支柱がすでに錆びてて動かし辛かったので自転車の更新時には改良して欲しい。



他のステーション。

5分くらい乗っただけだが他にも乗っている人を見かけたので意外と知られているのかもしれない。


返却は再びタッチして戻す


返却は再びカードリーダーにICカードをタッチして点等したランプのポートに写真を差し込むと返却完了。

借りたり返却したりするのはタッチしてから1分以内で行う必要があり、失敗したらもう一度タッチするだけでやり直せる。

ヨーロッパの自転車は返却する際に重さのあまりうまくロックできなくて手続きをし直すハメになったことも。きちんと返却しないとパリのヴェリブなら150ユーロ、ロンドンのバークレイズサイクルハイヤーなら300英ポンド(5万円!)がクレジットカードから保証金として引き下ろされてしまうのでかなり焦った。


開発はNTTドコモ


江東区臨海部コミュニティサイクル。

baybikeを開発したのはNTTドコモ。江東区や仙台でも実証実験をやっているそうで、お台場のコミケ帰りに赤い自転車を見た人も多いだろう。

ロンドンのバークレイズサイクルハイヤーは銀行のバークレイズがスポンサーでその名前が入っているように、別の地域で本格的に始める時はそのままドコモがスポンサーになって"ドコモ○○バイク"のような名前でも面白そうだし、ドコモであればポート自体をWi-Fiスポット化してネットワーク網を作ったら街のターミナルとして機能して非常に夢のある話になるのではないだろうか。


30分100円(税抜き)とシンプル


会員登録時の画面で、プランは現在月額会員1500円1回100円の2種類(料金は税抜き)。

1回の利用で最初の30分は基本料金以外はかからず、30分を超過すると30分ごとに100円加算されていくシステム。

例えば1回利用の場合、20分使って返却したら100円、75分利用したら300円といった感じ。月額会員は30分以内に返却すれば基本料金以外は無料で、30分以内に返却を繰り返せばずっと無料で使える。

ヨーロッパではポートから自転車がなくなるのを減らすためか長時間使うほどどんどん料金が高くなっていきこまめに返却させるのが主流と思われるが、横浜のbaybikeは30分ごとに100円加算でシンプル。

※30分150円(税抜)、月2000円(税抜)に値上げされている


ただしヨーロッパは基本料金だけで乗り回せるのが主流


バレンシアのvalenbisi。

例えばロンドンのバークレイズサイクルハイヤーでは1日2英ポンド、パリのヴェリブ(Velib’)は1日1.7ユーロのように、ヨーロッパでは基本料金を払ったらその後は30分以内に返却すれば何回でも無料で乗り回すことができる。これと比べるとbaybikeの1回利用30分100円というのはかなり見劣りし、月額利用しない観光客が長時間借りるなら普通のレンタサイクルをした方が安くなる。


エリアが狭くポートの数も少ない


baybikeは横浜駅から中華街あたりまでのベイエリアのみで狭く、ポートの数もそれほど多いとは言えない。ロンドンやパリでは何も考えずに走っていたらそのうちポートに行き当たるくらいたくさんあるが、baybikeでは地図を予め見ておくかスマートフォンで検索する必要がある。

baybikeには元々1日500円の設定があったようだが利用者が少ないのでなくなったらしく、これはエリアが狭すぎて長時間利用する人が少ないから。ヨーロッパでは地下鉄が走る範囲全域のようにかなり広いエリアで導入されており、ロンドンとパリの自転車は2万台前後ある。これと比べるとあまりにも狭く、本格導入とはいえまだオープンβの領域を脱していないと思う。いったん登録してしまえば借りるのは楽だがエリアが狭すぎて月額利用者は限られるだろうし、1日に数回程度と思われる観光客が使うには煩雑な登録が利用者を遠ざけていると思う。


6時から22時までしか使えない


ロンドンのバークレイズサイクルハイヤー。

ヨーロッパの自転車シェアでは少なくともロンドンとパリは24時間利用できたが、baybikeは午前6時から22時までの間しか利用ができない。コンビニや外食チェーンが24時間営業しライフスタイルの幅広い日本で日常的に使う人が早朝深夜に使えなかったらいったいどうするんだ?という感じ。バルセロナでは5時から24時らしいので、日本ではせめて始発終電をカバーするくらいはしてほしいところ。

観光にしても、前にロンドンで早朝の格安航空に乗るために朝4時に宿からバス停まで自転車で出発したことがあり、こういった使い方ができないのはどうかと思う。


言語選択できず英語すらないお粗末っぷり


バルセロナのビシング(bicing)。

例えばパリのヴェリブなら英語やスペイン語、イタリア語、ドイツ語、に切り替えできて、フランス語がわからなくても英語で表示してなんとか借りられたが、baybikeでは英語や中国語など外国語に切り替えることが一切できない。外国人観光客も多い横浜でこれだから正直「やる気あるのか」と強い憤りを覚えた。


まあ、\ドコモは日本のガラケーの筆頭キャリアだったから仕方がないかー!/


孤立化する日本市場を揶揄する”ガラパゴス化”の象徴だったガラパゴス携帯の筆頭であるドコモだから仕方がない、と思わず納得してしまった悲しい現実。日本語がわからなくても画面に従って想像力を働かせて入力していけば一応登録できるだろうが、名前がカタカナでしか入力できないので外国人が興味を示してもお断りしている状態らしく聞いて呆れた。


残念だが、"これが観光立国を目指す今の日本の姿である。"


恐らく自分の名前を無理やりカタカナにするか、もしくはいい加減な名前を入れれば登録自体は可能だと思うが、自転車自体は軽いしICカードで簡単に借りられるものの、初回登録が面倒で外国語対応なしで24時間借りられないところを見ると、ハードウェアは超一流なのにソフトウェアが未だに三流の日本の産業構造がこんなところからもにじみ出ているような気がして残念でならない。クールジャパンって叫んでる人もこういった足元をもっとちゃんと見て欲しい。


問題だらけだがそれでも日本での普及に期待したい


みなとみらいを軽快に走れる(自転車不可ゾーンは注意)。

というわけで、ヨーロッパの自転車シェアリングシステムと比べると、初回登録は煩雑だし利用時間に制限があるわりに1回利用の料金は高く問題点だらけだが、自転車は軽快そのものでいったん登録してしまえばその後はスムーズなので、リピーターには非常に使いやすいものに仕上がっている。英語対応すらなくそもそも外国人が利用できないのはお粗末すぎるので観光立国ニッポンを本気で目指すなら早急にどうにかするべき。

実際に使ってみて自転車自体はかなり使いやすく、月額1500円なら駐輪場料金より下手をしたら安く、自分でメンテナンスする必要もないし、自転車を所有する必要がそもそもなくなり放置自転車などの問題も減りそうなので日本中で普及してほしいと強く思う。しかしこんな体たらくじゃ一生かかっても日本で普及するのは望み薄だと思ったので、ポートにいたお兄さんがかなり丁寧に対応してくれたにも関わらず今回はあえて厳し目に書いてみたが、観光や通勤で起点から目的地までをシームレスで繋げる自転車シェアリングシステムが今後日本全国で広がることに期待したい。


追記:
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