香港作家のYanai氏により、台湾の漫画サイト「日更計画」で連載され、中国大陸の大火鳥アニメーションが制作し、日本でも放送されるというちょっとややこしいTVアニメ「実験品家族 -クリーチャーズ・ファミリー・デイズ-」。超高層ビルやマンションが林立する香港からは離れた田舎町っぽい風景だな、と思って見てみたら、香港の中心部・香港島の南西にあるラマ島(南丫島)だった。
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ラマ島(南丫島)
TVアニメ「実験品家族」第1話で主人公のタニスらが夕食するのは、ラマ島の榕樹灣渡輪碼頭(Yung Shue Wan Ferry Pier)からすぐの舢舨海鮮酒家(Sampan Seafood)。
ラマ島は香港島のセントラル(中環)から船で30分くらいで行ける田舎の漁村といった感じの島で、海水浴場やトレッキングはあるけどリゾートというほど気張っていないのどかな風景を楽しめる。ちなみに、南丫島の”丫”はアルファベットの”Y”ではなく、二股の枝や揚巻の髪の字らしい。
看板から「舢舨海鮮酒家」の文字が消えているが、ピンク色のお店外観はほぼそのまま。
手持ちの写真がこれしかなく、Googleストリートビューでごまかしたので、そのうちまた撮りに行かないと。
原作マンガの「実験品家族」には、すぐ近くのHSBC(香港上海銀行)が出てくるシーンもあり、作中では「CBSH」と書き換えられている。マンガは日本だとコミックバンチで連載。
ラマ島の形はかなりアレンジされて原型を留めていない。
ラマ島や長州などの離島には、タニスたちが住む家のように屋上にかまぼこ状のドーム屋根を持つ家が多い。
オープニングの実写
スタンレー(赤柱)
TVアニメ「実験品家族」OPに出てきたスタンレー(赤柱)。
香港島の南端で外国人の多いリゾートで、茶色い屋根の船着き場などが映っている。
プリンス・エドワード(太子)駅
横に突き出た看板はMTR(地下鉄)のプリンス・エドワード駅(太子)駅のようだった。
第3話 香港島と思ったらまさかの中国 ※追記
広州・北京路歩行街
TVアニメ「実験品家族」第3話でタニスとスイシが訪れた街は、香港島や九龍半島ではなく中国・広州の北京路歩行街と思われる。
香港に超高層ビルやマンションの見えない繁華街なんてあったか?と思って調べてみたらまさかの中国。
「本土へ行く」と言っていたが、香港島じゃなくて中国大陸だとは衝撃の事実すぎる。香港から広州まで2時間なのでラマ島からだと3時間くらいかかるぞ。
広州地下鉄
地下鉄は中国語で「地鉄」と言うが、実験品家族の地鉄マークは広州地鉄のものを上下逆さまにしたものになっている。
広州地下鉄の路線図を横長に伸ばした図だと思うがなんか違う気も。
視聴直後はタニスたちが訪れたのが香港のどこかわからず悩んでいたが、地下鉄のマークと路線図が香港ではないことに気がついて、広州であると突き止めるこ とができた。TVアニメ「実験品家族」の制作は中国の大火鳥動画というスタジオだが、上海の近くの無錫にあるらしいので、なぜ広州が出てきたのかは不明。
広州からエリート家庭教師がわざわざ3時間くらいかけて香港のラマ島まで来ていたのは熱すぎるな。住み込みかもしれんけど。
地下鉄車内も香港のMTRではなく広州のものになっている。
スタンションポールや座席端の三角形状の板などが一致する。
広州にはタニスたちが訪れた「白雲山駅」に似た「白雲○○駅」がいくつかあるのだが、百度地図で見た限りでは一致する場所が見つからずモデルがあるのかどうか不明。
中国大陸なのに繁体中文
駅の案内ディスプレイは目立つ黄色と赤色で注意書きがある。
「ホームと列車の間に隙間があるから注意しろ」という感じの案内も完全に同じ文章があるが、TVアニメ「実験品家族」の作中の中文は香港なのに基本的に簡体字になっているのになぜかここは中国なのに繁体字になっている。
パイナップルパン
元家庭教師と入った喫茶店(茶餐廳)でタニスたちが食べるもの。
トーストはともかくこれが何かわからなかったので調べてみたら、日本でいうメロンパンに相当するパイナップルパン(菠蘿包 / ポーローパーウ)を温めて冷たいバターを挟んだ菠蘿油(ポーローヤウ)だった。
チーズじゃなくてバター。これだけ大きなものを食べたら身体に悪そうだけどこれが香港名物の1つになっている。
重いテーマを扱う実験品家族だけに、序盤では唯一の濡れ場と言える食べ物描写はなかなか気合入ってるな。
榕樹灣渡輪碼頭
タニスとスイシが香港島から戻る榕樹灣渡輪碼頭(Yung Shue Wan Ferry Pier)の様子がよく映っていた。
フェリーターミナルの構造は2階部分が省略されているがほぼ同じ。
実験品家族では中華ちょうちんがたくさん吊るされていたが、9月に訪問した時は旧暦お盆・国慶節のノボリがたくさん。
イングリッシュネーム
実験品家族第3話ラストで、タニスはなぜか「カニス」という嘘の名前をスミレに教えた。イギリスの植民地だった香港は今でもイングリッシュネームで呼び合う文化が残っているので、タニスだろうがカニスだろうが外国人っぽい名前とは言えないと思うのだが、そこは細かいことなので気にしてはダメなのだろう。
普通の生活を送りたくも他の人間が信じられなくなってしまったタニスたちに当たり前の日常が訪れる日は来るのかどうかは、このスミレが重要人物になりそうなので注目していきたい。
香港の田舎の島を丁寧に描く
ラマ島はこのようにオープンテラスの海鮮レストランが多数あり、「実験品家族」の作中にも出てくるような狭い小路も多い。
これまで、日本やヨーロッパの歴史的な町並みや田舎を描く作品は多かったが、日本以外のアジアではほとんどなかった。「実験品家族」では香港の島の日常風景が丁寧に描かれており、中華圏の作家やスタジオの台頭でこうした舞台の空気感を感じられて「行ってみたい!」と思わせてくれるような作品が増えることに期待したい。
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