戦艦サウスダコタのスクリューや装甲、世界で唯一残された大和型の主砲塔甲鈑がワシントン海軍工廠に保存されている


アメリカ合衆国の首都ワシントンにあるワシントン海軍工廠(Wahsington Navy Yard)。アメリカ海軍国立博物館やウィラード・パークで展示される戦艦サウスダコタのスクリュー、フレッチャー級駆逐艦の艦橋、大和型戦艦の主砲塔パーツ、空母エンタープライズの錨など貴重な資料を見学。


アメリカ海軍国立博物館

艦砲工場跡に置かれる兵器や歴史展示


かつてはBuilding 76と呼ばれる艦砲工場だったアメリカ海軍国立博物館(U.S. Navy Museum Exhibits focused on US Navy history)。



館内は近代から第二次世界大戦までのアメリカ海軍の歴史展示がある。

艦これにも実装されているF4Uコルセア、Bofors 40mm四連装機関砲、5インチ連装砲、日本の7.7mm機銃(残骸)などが展示されている。



ロケット特攻機の桜花

これは練習機のためオレンジ色をしており、滑空して着陸するためにスキー板のようなものが取り付けられている。

本番では一式陸攻から射出され敵艦船に特攻して帰ることはないためこのスキー板は取り付けられない。


フレッチャー級駆逐艦の艦橋


フレッチャー級駆逐艦の艦橋を再現をした展示。連絡を行うテレグラフなどが置かれている。



フレッチャー級駆逐艦1番艦のフレッチャー(USS Fletcher, DD-445)の模型が置かれている。

この艦橋の再現は解体されたフレッチャーのものなのか、姉妹艦のものなのか、予備のパーツからなのか、については記述がなく詳細がわからなかった。


戦艦ワシントンの砲栓


戦艦ワシントンの砲栓。

第三次ソロモン海戦第二夜戦で戦艦サウスダコダと共に戦い戦艦霧島を撃沈したノースカロライナ級戦艦2番艦ワシントン。戦闘を行わない時に16インチ三連装砲の砲身先端に取り付けられていた砲栓が保存されている。

首都ワシントンだけに。


駆逐艦バリー※解体済


第二次世界大戦より後に建造されたフォレストシャーマン級駆逐艦バリー(USS Barry, DD-933)。

博物館として公開されていたがワシントン海軍工廠に停泊していた2015年の訪問時は外から眺めるのみで、2016年にフィラデルフィア海軍工廠で解体されたようだ。


ウィラード・パーク

米海軍の14インチ列車砲


アメリカ海軍国立博物館の前に広がる公園のウィラード・パーク(Willard Park)。

第一次世界大戦でフランスに送ったアメリカ海軍の14インチ列車砲大和型戦艦の46cm砲弾

列車砲は海軍の50口径14インチ砲を用いたもので、陸軍じゃなくて海軍が列車砲を運用していたことに驚きを隠せなかったが、間違いなくUSNと書かれていた。しかも長い砲身を傾けるには地面に穴を掘るしかないらしく想像を絶する。


世界で唯一保存される大和型戦艦の砲塔パーツ


ワシントン海軍工廠の目玉展示と言えば、何と言っても陸上では世界でここにしか残されていない大和型戦艦の砲塔パーツであろう。

このパーツは空母となった大和型戦艦3番艦信濃用に製造して呉に保存されていたもので、アイオワ級戦艦の50口径16インチ砲で貫通試験を行った時の大穴が開いている。



大和型戦艦の砲塔で砲室の角にあたる部分の前盾パーツとなる(写真赤丸)。

当時の日本の技術では大和型戦艦ほどの巨大な甲鈑を一枚板で製造できなかったため、複数のパーツをモザイク状に組み合わせることで作成していたことを今に残している大変貴重な資料となる。



大和型戦艦に用いられたVH甲鈑は、表面は硬く、内側は衝撃を吸収して貫通を防ぐために粘り気を持つ構造になっている。貫通跡では中の方の金属が伸びるようになっているのがわかり、設計通りに見事なっていることを見て取ることができる。

主砲塔の甲鈑の厚さは650mmで、実測でも65cmくらいであるので偽りはなかった。



ちなみに、16インチ砲による貫通試験は艦砲としては至近距離で行われたらしい。

アイオワ級戦艦50口径16インチ砲の性能試験(徹甲弾、強装薬)では、10km離れた際の垂直防御の貫通甲鈑厚は664mmなので、10km以上離れると大和型戦艦の装甲を貫通することができない

「世界最強のアメリカ海軍が唯一果たせなかった世界最大の戦艦を貫いたのでやっぱりアメリカが最強!」というのを誇示するいかにもアメリカらしい下品な展示で、これを見るためにわざわざ東海岸のワシントンまで来た甲斐があったというものである。


戦艦サウスダコタのスクリューと装甲


艦これにも実装されるサウスダコタ級戦艦1番艦サウスダコタのスクリュー

太平洋戦争で初の戦艦同士の殴り合いとなった第三次ソロモン海戦第二夜戦に戦艦ワシントンと参加し、ギルバート諸島、マーシャル諸島、フィリピン、沖縄などで活躍し、第二次世界大戦では13のバトルスターを獲得。1947年に予備役艦となり、1962年にスクラップとして解体されたがワシントン海軍工廠にスクリューと装甲が保存されている。

このスクリューは1分間に179回転して速力28ノットを出すことができた。



戦艦サウスダコタの甲鈑

舷側で喫水線付近の垂直装甲となり、厚さは12.2インチ(310mm)。



説明書きにはなぜか「厚さ約16インチ」と書かれていたが間違いであろう。実測でも31cmくらいだった。

艦艇の防御は自分に積んでいるものと同じ砲で攻撃された時を想定して設計するが、ノースカロライナ級戦艦は45口径16インチ砲を搭載していたものの防御に対しては14インチ砲を想定した装甲しかなかった。これは元々14インチ砲を搭載する予定だったので仕方ないが、次のサウスダコタ級戦艦では16インチ砲を想定した装甲を持つこととなった。

残念ながら戦艦サウスダコタは解体されてしまったが、バラバラになって一部だけが残されたおかげで実測で装甲の厚さを確かめることができたので、フィールドワーク感が出て装甲と一緒に胸も”厚く”なるな!



戦艦サウスダコタの7.5インチ甲鈑


喫水線より上の部分らしい。



7.5インチは18.75センチくらいとなるが、実測では18.5cmくらい。


冷戦博物館


冷戦博物館(Cold War Gallery Museum)。





核、潜水艦、宇宙開発など、第二次世界大戦より後の東西冷戦に焦点を当てた展示となる。



長崎に投下されたのと同じ原子爆弾ファットマン



原子力空母エンタープライズCVN-65の模型の前になぜか日本の鳥居らしきものが置かれているが理由がわからなかった。


海軍アートギャラリー


Building 67がNavy Art Galleryとして公開されている。


航空母艦エンタープライズの錨


ヨークタウン級航空母艦2番艦のエンタープライズ(CV-6)。

ミッドウェー海戦で日本の4空母撃沈に貢献し、何度損傷しても蘇り硫黄島や沖縄戦まで歴戦した武勲艦。

艦これにもそのうち実装されるだろうと思っていたら、イントレピッドでまさかエセックス級の方が先に来るとは思いもせず。アズールレーンでは主人公格となっているが、艦これでのエンタープライズ実装はいったいいつになるのか。



エンタープライズは戦後に保存されることなく解体されてしまったが、ワシントン海軍工廠に主錨と鎖が残されており、一面芝生が広がって海軍施設であることを忘れるくらいのどかな場所で余生を送っていた。

エンタープライズの錨はどこにあるのかわからず、案内してもらうと敷地内北のアドミラル レアッツェ・パーク(Admiral Leutze Park)の南端だった。



先程のアメリカ海軍国立博物館にはエンタープライズに特攻した航空機の翼の一部も展示されている。


ワシントン海軍工廠へのアクセス・行き方


ワシントン海軍工廠の正門?

ワシントン海軍工廠の住所は11th Washington, DC 20003。まず敷地南東のビジターセンターの門(11th and O Street SE)から入る必要があり、地下鉄ブルーライン、オレンジライン、シルバーラインのPotomac Avenue駅から0.8マイル、グリーンラインNavy Yard-Ballpark駅から0.9マイル。ワシントンはシェア自転車のキャピタルバイクシェア(Capital Bikeshare)をやっているのでクレジットカードを登録して移動した。内部よりビジターセンター門付近の警官がかなり厳しいので不審な行動は控えた方がよい。



正門付近の銘板。

ビジターセンターではパスポートの提示と自身の肌や瞳の色など事細かく記入する用紙を提出すると、公園や博物館を自由に見て回ることができた。ワシントン海軍工廠で銃撃事件が発生して公開停止になるなど情勢によって左右されるので注意が必要。新型コロナウイルス以前の営業時間は月-金9-16時、土曜10-16時で日祝は休みであった。現役の海軍施設のため入場は無料で、公開箇所を常識の範囲で写真撮影する分には問題なかった。

日本からアメリカへはANAエコ割50で羽田→ロサンゼルス→ワシントン→成田と発券して111560円。ロサンゼルス近郊の戦艦アイオワやワシントンのスミソニアン航空宇宙博物館別館などを周遊した。

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