南太平洋に浮かぶバヌアツ。人口30万人ほどしかいない小さな島国ながら、元祖バンジージャンプと言われるナゴール、火口を世界で最も間近に見られるヤスール火山、太平洋戦争でハワイに次ぐ太平洋の米海軍基地だったエスピリトゥサント島、日本人男子なら誰もが憧れるエロマンガ島など見どころが多い。ツアーで手配すると料金がめちゃくちゃ高いので、全部バヌアツ航空の国内線で手配を行って費用を抑えつつ移動してみた。地図画像はgcmapで作成。
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ペンテコスト島とタンナ島のツアー代は高い
ナゴールの飛ぶ瞬間。
ヤムイモの収穫祭と成人の通過儀礼として蔦を足にくくりつけて櫓の上から飛び降りるナゴール(NagholやNanggolなどと書く)。このナゴールはバヌアツのペンテコスト島で元々4月に行われていたそうだが、現在は観光客向けに乾季の6月まで行われている。
操縦士を入れて7人乗りの小型航空機で日帰りするAir Taxi Vanuatuのツアーは、コロナ禍後の物価上昇を経て53000バツ。ジュゴンに会えるかもしれないエピ島にも立ち寄るツアーだと59000バツ。
バヌアツの通貨はかつて1バツ=1円程度だったものが、2023年は円安のせいで1バツ=1.15円程度。キャッシングした際のATM手数料650バツや、本来徴収してはならないはずのクレジットカード手数料をバヌアツではどこでも3~5%取られることを考慮すると1バツ=1.2円くらいの感覚となる。
また、バヌアツの南にあるタンナ島では赤いマグマが吹き出す火口を見ることができるヤスール火山がある。ヤスール火山ツアーも日帰りで59000バツ、タンナ島のビーチリゾートホテルに1泊すると、ホテルのランクによって69000バツ、79000バツ、85000バツするのだ。
タンナ島は日帰りだとヤスール火山の迫力あるマグマを日没後まで見ることことができないため最低1泊は必須となる。
ペンテコスト島日帰りとタンナ島1泊をツアーで頼むと128000バツとなり150000円を超えてしまう。いくらなんでも高すぎるのでバヌアツ航空の国内線を使って個人手配を行い安く楽しく行こうと計画を練ってみた。
ペンテコスト、サント、タンナ、エロマンガ島への国内線
VLI: 首都ポートビラ
SON: エスピリトゥサント島
LNE: ペンテコスト島ロノーロア空港
TAH: タンナ島
IPA: エロマンガ島イポタ
DLY: エロマンガ島ディロンズベイ
バヌアツ首都ポートビラから北のエスピリトゥサント島とペンテコスト島はバヌアツ航空の直行便または経由便が存在する。
ポートビラから南のタンナ島も直行便が存在し、記事執筆時点では土曜日にポートビラ→イポタ→タンナ→イポタ→ディロンズベイ→ポートビラというアイランドホッパーな経由便があった。
つまり、ポートビラ→イポタ、イポタ→ディロンズベイ→ポートビラというチケットを購入すればイポタに半日くらい滞在してエロマンガ島を満喫できる。ポートビラとタンナ島を結ぶ旅客兼貨物船があるものの運行は不定期で、問い合わせたらそもそもエロマンガ島に寄るとは限らないそうだ。ポートビラから1回飛んでしまえば途中で運休になることはほとんどないだろうから、電気の通っていないエロマンガ島に何日も滞在することなくバヌアツ航空国内線で安全に日帰りできると考えたわけだ。
購入したバヌアツ航空国内線のチケット
ポートビラ→サント島→ペンテコスト島
スカイスキャナーで検索してTrip.comやBudgetAirで購入したチケットは下記となる。- NF210 VLI 06:30 → SON 07:20 木曜
- NF223 SON 13:50 → 14:45 LNE 木曜(SSR経由)
しかし、木曜日はエスピリトゥサント島経由しかなく、早朝にポートビラを出発してエスピリトゥサント島に6時間30分の乗継滞在になった。渡航間際にポートビラからロノーロア空港への直行便が午前に設定されたものの、何もなさそうなペンテコスト島に長居は無用と考えて、米海軍の残骸が多く残るエスピリトゥサント島のルーガンビル市街や公設市場を半日で巡った。
ペンテコスト島→ポートビラ→サント島
- NF223 LNE 13:50 → VLI 14:10 土曜
- NF208 VLI 14:40 → SON 15:50 土曜
しかし、パイロットの都合だとかで運行がポートビラで打ち切りになり、「降りろ!」と言われてしまう。バヌアツ航空の窓口に行くと翌日夕方に出発するNF208便に無料で変更されたものの、エスピリトゥサント島での滞在が1日減ることになってしまった。
サント島→ポートビラ→タンナ島
- NF209 SON 17:00 → VLI 17:50 火曜
- NF240 VLI 12:10 → TAH 12:50 水曜
タンナ島ではヤスール火山近くの宿を取り2泊して、徒歩でカスタムビレッジやアメリカ人を神とするカルト宗教のジョンフラム カーゴ・カルトの村と温泉へ行った。
タンナ島→ポートビラ→エロマンガ島→ポートビラ
- NF241 TAH 13:30 → VLI 14:10 金曜
- NF242 VLI 07:00 → IPA 07:50 土曜
- NF243 IPA 13:35 → VLI 14:40 土曜
チケットの総額と個人手配の総額
- 13360円 VLI→SON→LNE 木曜
- 09224円 LNE→VLI→SON 土曜
- 27700円 SON→VLI→TAH 火~水曜
- 07890円 TAH→VLI→IPA 金~土曜
- 10740円 IPA→VLI 土曜
ペンテコスト島、エスピリトゥサント島、タンナ島、エロマンガ島を巡って合計7万円以下に抑えることができた。
ポイントはポートビラのあるエファテ島より北のエスピリトゥサント島とペンテコスト島は直行便ではなく経由便を代理店で購入するとチケットが安くなりやすいこと。また、エファテ島の南になるタンナ島とエロマンガ島も同様で、タンナ→ポートビラ→イポタは片道ずつ買うと2.5万円くらいはするものの、経由便の扱いになって7890円という激安価格で発券することができた。
ペンテコスト島2泊とナゴールの費用
ペンテコスト島のNodaゲストハウスは、空港から宿まで送迎3000バツ、宿からナゴールと空港送迎7000バツ、ナゴール入場料10000バツ、2泊6000バツ、滝と洞窟の徒歩ツアー3000バツで合計29000バツだった。ペンテコスト島ではニューカレドニアで発生した地震による津波から逃げるため、山の上の集落に移動してカヴァ作りを見学するという無料アクティビティがついたので忘れられない体験となった。しかし、2日間も水シャワーで夜18-21時しか充電ができない何もない島に滞在することや、バヌアツ航空国内線の欠航リスクを考えると、Air Taxiのツアーもそれほど高い訳ではない気がする。電気のない限界の島を体験したい人以外はナゴールツアーを使うことをオススメする。もう1つ手段として、土曜の朝ポートビラを出発して土曜の午後ペンテコスト島を出発するバヌアツ航空国内線で日帰りする方法もある。Nodaゲストハウスなどに連絡して空港からナゴール見学までをアレンジしてもらえばおそらくできるのだろう。私が予定を組んだ時はまだ朝の便がなかったため日帰りという選択肢はなく、渡航直前に便が設定されていることに気がついたものの予定を変更するのが面倒になったのでやめてしまった。オーストラリア人と思われるおっさんが1人だけこの方法でナゴールを日帰りしていた。飛行機の中で「チケットいくらだった?」と聞かれたので私と同じように節約派だったのだろう。
タンナ島の2泊と徒歩ツアーの費用
タンナ島では、空港から火山への入口にある宿までの送迎が片道5000バツ(2人以上いると1人2500バツ)、火山の入場料1回目8000バツ(2回目と3回目以降は少しずつ安くなる)、火山への片道3kmほどの山道送迎1000バツ、2泊が3539バツ。宿の人によるカスタムビレッジとブラックマジックへの案内が1000バツ(2人でいったので1人500バツ)、カスタムビレッジ1000バツ、ブラックマジック1500バツ、徒歩で行ったジョンフラムの村の温泉が1000バツ。合計21539バツとなった。宿の送迎は運良く別の人と一緒になって往復5000バツですんだのでペンテコスト島と比べて安く収まった。
タンナ島は個人手配して火山の近くの宿に泊った方が安く、何回も火山に行ったり、ジョンフラムの村と温泉も火山の斜面を見ながら片道6kmくらい歩くと観光できる。日程に余裕があって、部屋は蚊帳のみ、水シャワー、充電が18-21時にしかできない、などに耐えられる人は、空港近くのビーチリゾートではなく火山付近に滞在することを強くオススメする。
火山付近の宿のうちJungle Oasis Bungalowは敷地から火山を見ることができずツリーハウスもサイクロンで破壊されてしまったようだが、太陽光発電により常時充電できるようだったので、私は泊まっていないがこの宿を強く勧める。私の泊まったTanna Volcano View Tree Houseは予約サイトを複数登録しすぎて管理できておらずオーバーブッキングを起こして隣の宿へ連れて行かれてしまった。Whatsappの返信はすぐに返ってくるし夫妻はとてもいい人だったが、時間にルーズすぎて食事が1時間遅れになったり、領収書を何度も請求したが結局発行されなかった。ガイドブックに載らないのには何か理由があるということを身をもって知ったわけだ。
なお、バヌアツへのアクセスは火金の週2便で復活したフィジー航空でバヌアツ着水曜、バヌアツ発が2週後の火曜として往復71277円だった。フィジー航空はワンワールドコネクトのためJALなどワンワールド各社にマイルの加算が可能で、アラスカ航空だと格安運賃のNやTクラスでも飛距離の50%加算されるのでお得(加算まで2週間以上かかる)。ブリティッシュ・エアウェイズは15%、アメリカン航空は30%だったと思う。JALは調べたけどわからん。
バヌアツ航空国内線の注意点
特にポートビラとタンナ島間は需要が高く慢性的に満席が続くため、事前に余裕を持って発券しておこう。バヌアツ航空線は払い戻し不可の運賃と払い戻し可能な運賃の差額がほどんとないため、Trip.comなどの代理店で払い戻し可能な運賃でさっさと発券しよう。
タンナ島でバヌアツ航空が欠航したり満席だけど予定を変更したいと思った時はAir Taxi VanuatuやUnity Airlinesなどのチャーター便に余っている席がないか問い合わせよう。英語に不安がある時や緊急時は日本人経営ホテルのザ・メラネシアンに入っている旅行会社SPTに問い合わせるのも手。なお、1人でチャーター便を飛ばす場合は205000バツかかる。
バヌアツ航空はオーストラリアのカンタス航空と提携しておりマイレージプログラムのクラフィック・フライリワード番号を登録することが可能。しかし、一向に加算される気配がない。
エロマンガ島へいくはずが……
ポートビラ→イポタ→タンナ→イポタ→ディロンズベイ→ポートビラの図。
「タンナ島のダイナミックな自然と文化を満喫できたので最後に日本人男子の夢、エロマンガ島だ!」と意気込んだところ、土曜日のエロマンガ島方面の定期便がなぜか3日後に変更され、その日はもう帰国してしまうのでエロマンガ島への上陸が果たせなくなるという今回のバヌアツ旅に壮絶なオチがついた。タンナ島からポートビラに帰る金曜日の便が欠航した場合も月曜日に代替便を飛ばしてくれれば火曜の帰国に間に合うため、ポートビラのあるエファテ島滞在は最後に確保しておいたのだが、予備があと1日足りなかったというわけだ。
しかも、3日後に変更になった便はタンナ島に寄らなくなり、ポートビラ→イポタ→ディロンズベイ→ポートビラと経由するだけになったため、仮にこの便に乗れたとしてもエロマンガ島に滞在する時間が確保できなくなってしまったのだ。
窓の下に広がるエロマンガ島。
「大雨もないし、滑走路が草でも飛べるDHC-6 ツインオッターなら大丈夫だろう!」と思っていたらこのザマである。エロマンガ島西側のディロンズベイには日本人も行った人の記事を見るものの、東側のイポタについてはまったく情報がないので「首狩り族の村を訪問してヤマジュンの「くそみそテクニック」の布教ができたらいいな!」と考えていた計画は雲散霧消となってしまった。
ポートビラとタンナ島を結ぶ定期便からはポートビラ発は進行方向左側、タンナ発は進行方向右側にエロマンガ島が見えるため、機内から阿部さんとエロマンガ島を見下ろしてお互いを慰めるしかなかった。
7890円で発券したタンナ島→ポートビラ→イポタのチケットは、タンナ島→ポートビラだけ使用し、空港窓口でポートビラ→イポタはキャンセルとなった。別で買ったイポタ→ポートビラはTrip.com上から払戻手続きを行った。欠航証明書を窓口で頼んだら「わかった!作っておく!」と言われたものの、帰国前に受け取ろうとしたら案の定発行されておりず、ポートビラ→エスピリトゥサント島とエロマンガ島往復分で2枚発行するのに20分くらいかかったので注意。欠航証明書はテンプレに名前や便の情報を打ち込んでプリントアウトするというちゃんとしたものだった。「それならテンプレをたくさん印刷しておいて手書きした方が速いだろう」と思うわけだが、ここはバヌアツである。
バヌアツ航空はボーイング737やATR-72を使う国際線も含めて遅延や欠航が多く、日程に余裕がない人が上記のような無茶苦茶な移動は絶対にしてはならない。タンナ島で一緒だった日本人はポートビラ→シドニー便が欠航して翌日に振替となり、ホテルや食事は無料手配されていた。2週間弱の滞在で、ポートビラ→エスピリトゥサント島が1回欠航、タンナ島→ポートビラは3時間以上遅延、エロマンガ島行きは3日後に変更、というトラブルに遭遇。30~60分の遅延程度はもはや定時と変わらない雰囲気で、運行・整備・修理がロクにできない南太平洋の洗礼をバッチリ受けることになった。
エスピリトゥサント島では大雨やコロナ禍中に森がブッシュ化した影響で墜落したB26やB17爆撃機を見ることができず心残りだったので、次は誰かを連れてバヌアツを再訪してみたい。
またいつか会おう、エロマンガ島……。