アニメファンが地方自治体から表彰されるという時代


豊郷小学校旧校舎と"とよさみ"イメージキャラクタ。

11月23日に滋賀県豊郷町で全国アニメ聖地サミットin豊郷(とよさみ)が開催。アニメやマンガなどのロケ地を巡る舞台探訪に関する研究者や町おこし関係者などが公演を行った。


近江鉄道の四季を表した豊郷駅のイラスト。



近江鉄道は西武グループのため、西武鉄道がタイアップしているヤマノススメに登場していない八幡山ロープウェーでゴリ押しの企画を行っている。



豊郷駅から豊郷小学校旧校舎群へは徒歩10分ほど。




駅前のジュエリーショップがアズライトをゴリ押しで売っていたりして商魂たくましい。



遠くから見て吐血してるのかと思ったから違った。



豊郷小学校旧校舎に到着。

とよさみでは、コンテンツツーリズムを推進する山村高淑教授、アニ玉祭などの町おこしイベントのプロデューサー柿崎俊道氏がアニメやマンガなどの舞台探訪を行うファンの行動様式や町おこしについて公演を行った。



講堂。

豊郷小学校旧校舎群は元々取り壊される予定があったのが「けいおん!」の学校の舞台となり有名になったことも一役買って保存が決まったこともあり、地域の伝統文化の再生や再評価について踏み込んだ話題もあった。



間接照明は後付のようだが美しい校舎内。

とよさみでは他に、滋賀県に縁のある「瀬戸の花嫁」「天体戦士サンレッド」「Angel Beats!」「蒼き鋼のアルペジオ」などの岸誠二監督、「囚人リク」連載の瀬口忍先生、「ラブひな」乙姫むつみや「フルメタル・パニック」千鳥かなめなどの声優・雪乃五月さんによる、アニメやマンガ業界で働きたい人に向けたクリエイターセミナーや交流会も。



歴史的建造物なので選挙じゃなくても合法的に小学校空間に入れる。

他には分科会として学生の研究発表や、NHKクローズアップ現代で「あざとい鴨川」「オタなめるな」と町おこしに失敗したような例として紹介されスケープゴートになってしまった「輪廻のラグランジェ」の鴨川の取り組みについても行われた。

アニメやマンガのロケ地になった市町村は今や350以上であることが判明
クローズアップ現代は少し制作のお手伝いしたこともあったので鴨川があのような紹介のされ方をしたある意味戦犯の一人としていろいろ思うところはあったものの、鴨川がアニメを誘致したりストーリーに介入したわけではないというような発表もされ、本当のところを解説したそうだ。



奈良県を舞台とした「咲-saki-阿知賀編」「境界の彼方」、千葉県鴨川市の「輪廻のラグランジェ」などとタイアップした町おこしグッズの販売も。



旧校舎のわきにある酬徳記念館。




図書館の棚が「けいおん!」のグッズ置き場に使われている。

こういうのってもし将来撤去する日が来たらどうするんだろう、といらぬ心配をしてしまった。



この「軽音楽カフェ」って大丈夫なのかな……。




滋賀県に多い、飛び出し事故防止を啓蒙する「とび出し坊や」。

観光するところがなければ作ってしまえ!ということでアニメ風の「飛び出し坊や」いろんなところに設置されているのだが、全く関係ない作品が置かれているのは本当に大丈夫なのだろうか……。



「けいおん!」の部室を再現している部屋のようで。



というわけで、第三分科会で行われたファンによる舞台探訪の活動報告を行う発表会で豊郷町長から最優秀賞をいただいてしまいました。

まあ、賞状にとよさみ実行委員会会長の伊藤定勉町長の名前が入っているだけなのだが、後で直接お話した際に改めて手渡ししていただいたり。

似たような例としては、Free!の舞台・岩美をいち早く紹介しホモ水泳好きの女性が大挙として押し寄せるきっかけを作ったとしてお知り合いのリジスさんえてすけさんが鳥取県岩美町長から感謝状を贈られるというのが10月にあったばかり。こういったことは遠い世界の話のことだと思っていたのでまさか自分もこんなことになるとは思わず。



近江米を贅沢に半分まで削る「長寿金亀 黒」というお酒にとよさみのラベルを貼ったもので、50%磨きの酒なんて初めて飲んでのでほとんど酒飲まない私でも非常に飲みやすかった。

これまで何度もアニメキャラのラベルを貼っただけのお酒やジュースを飲んできたけど、これだけよいお酒なら今すぐにでもどんどん売り出すべきであると思う。



豊郷町の「とよ防かぼちゃん」を使ったカボチャプリン。サツマイモみたいな甘さで濃厚でございました。


ファンが舞台探訪によって情報を発信したり町おこしなどの活動を行うというのは、コミケの同人誌における二次創作と似たようなグレーゾーン問題がどうしてもつきまとう。例えば、比較の写真と一緒に大量のキャプチャを並べ立てるだけでは法律で認められた引用の範囲内になるかは微妙だろう。弊サイトではできるだけ実際の風景とどう違うか、風景から読み取れる舞台設定の解説、主人公たちの生活や心理描写の考察などをできるだけ書くようにしているが全てでできているとは言えない。また、近年は地元商工会などと一緒に著作権者からきちんと許可を得てグッズ制作やイベントを行う例も増えてきたが、個人ベースや同人イベントで行う場合は基本的にこのようなことはない(グッズなどは製作委員会に出資してる大手のグッズと競合するものは出せないので許可を得る際も制限がないわけではないが)。

具体的な発表内容について公開できないなどの条件などはあっても、これまで公共の場でファンによる活動を紹介するような機会がそもそもありえない話だったので、今回こうした場を設けていただいたのはとても貴重なことであったと思う。

近年のTVアニメの舞台探訪は最速で見つけて情報を公開するまでの競争が非常に激しく、また各話ごとに毎週現地に赴いて丁寧に完全一致する写真を並べなければならないのに私はついていけず、人気アニメは競争が激しいのでマイナーな作品ばかりになったり、海外へ出稼ぎに出ている状態なので、今回このような評価をいただいたことに感謝したい。



とよさみのポスター。右は翌日開催の「とよさと軽音楽甲子園」で文化庁後援というから驚き。


自分が舞台探訪を始めたのはせいぜい「おねがい☆ティーチャー」とか「北へ。」あたりだったので、「天地無用」や「セーラームーン」、「究極超人あ~る」「めぞん一刻」から果ては「アルプスの少女ハイジ」まで先駆者達に比べればまだまだ新参モノだと思っていたら、とっくに10年以上経ってしまい、アニメで町おこしなんて当たり前で人が押し寄せるような時代がきたり、ファンが地方自治体から表彰されるような日が来るとは当時思いもしなかった。私はコンテストに応募してたまたま選ばれただけだが、Free!の岩美町はファンによる舞台探訪の活動が底辺で支えているところにスポットライトを当てた例として注目するべきだと思う。

人口7000人ほどの町で面積も小さくこれまで観光客が来る要素は全くなかったという豊郷。たまに建築マニアが旧校舎を訪れることがあるくらいだった町に今や年間5万人が訪れるようになり、実際に行ってみて町で起こった様々な変化を目の当たりにした。とよさみの公演でも触れられていたことだが、気がつけば舞台探訪は制作者に加えて地域とファンが一体となってコンテンツを盛り上げるようなものへと成長しておりそれを実感できたイベントだった。


告知

コミックマーケット87 12月30日(火) 3日目西に-04b「さざなみ壊変」でアイマス舞台探訪本でシンデレラガールズのドイツなど、艦これ史跡探訪本でタイに輸出された艦、ヴェールヌイのロシア太平洋艦隊などを紹介します。

舞台探訪に関するお願い
舞台探訪はマナーを守り節度を持った行動を心がけてください。観光地はもちろん民家の多いところや公共施設では特に他人の迷惑になったり不審に思われる行動はとらないようご注意をお願いします。

ロケ地によっては観光地化されていないところも多く、そこに人が住んでいてそれぞれの生活がある場所を、宗教的なものを彷彿させる「聖地」や「巡礼」と呼んで騒ぎ立てるのは誠に忍びないという思いから、弊サイトでは聖地巡礼という呼び方をせず、舞台探訪、ロケ地巡り、背景訪問、逆ロケハンなどを推奨しています。
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