サクラ大戦3で憧れた花の都フランス・パリに行ったら治安の悪さに衝撃を受けてパリ・シンドロームになった : さざなみ壊変

凱旋門。

2001年にドリームキャストで発売したサクラ大戦3。巴里華撃団による花の都パリでのドラマを見てから10年が経った2011年、念願かなってパリを訪問したものの完全に更新するタイミングを失っていたのだが、ノートルダム寺院の火災を見てふと思い出した。不謹慎かもしれないけどかつての姿をお見せしたいのと、平成も最後だしこの機会に紹介してもバチはあたるまい。

サクラ大戦3のOPムービーにも映るノートルダム寺院(ノートルダム大聖堂)。

教会というよりはもはやラスボスの城といった風格。

エッフェル塔、シャンゼリゼ通り、凱旋門などと並ぶパリの観光名所ノートルダム寺院は、第九話「柵に囲まれし島」の戦闘パートでも登場する。

ドラマパートでよく出てくるエッフェル塔などが一望できる風景はこのノートルダム寺院の塔から。

遠目に見えるビル群を除くと、帝国華撃団や巴里華撃団が活躍していた太正の時代から約100年が経った今でも変わらぬ風景を留めていた。塔に上って一面に広がるパリの町並みが広がった時の「大神一郎と同じ舞台に立ったぞ！」という胸の高まりは半端ないものであった。

パリ北駅。

サクラ大戦3の物語冒頭でフランス留学に来た大神一郎が降り立つのはパリ北駅。

パリ北駅は1846年開業で、駅舎はサクラ大戦3の時代からほとんど変わっていない部分を見つけることができる。

大神さんはパリに蒸気機関車でやってきたけど(シベリア鉄道経由？)、現代では電化され高速鉄道のTGV、ヨーロッパ内の各国を結ぶタリス、ロンドンへ行くユーロスターなどがズラッと並ぶ姿を見ると100年での時代の変化を体感。

パリへはロンドンからユーロスターでドーバー海峡を越えて日帰りの訪問。サクラ大戦3で大神さんが最初にたどり着いたのと同じ駅からパリ旅を始められることに興奮し、憧れのパリにようやく来ることができて期待に胸ふくらませたわけだが、それは一瞬で打ち砕かれることになる。

パリ北駅の外に出て道行く人を見ると肌がみんな濃い色でフランスのはずなのに白人など1人もいない。「ロンドンからヨーロッパを通り越してアフリカにでも来てしまったか！」と思ったくらいで、とりあえずシェア自転車のヴェリブに乗ろうと思ったら、チェーンがだらしなく外れてるわ、サドルは反対を向いているわ、でまともな自転車が1つもない！一刻も早くここから逃げなければいけないという恐怖感に駆られて足早に中心部のある南方面へ歩いていった。

自転車のサドルがいたずらで逆向きなのがわかるだろうか。

パリ北駅に隣接するパリ18区、19区、20区は移民や難民が多くてパリの中でも最も治安が悪いエリアとなり、パリ北駅のあるパリ10区も要注意なエリアの1つだ。ユーロスターの到着前はこの18～20区のエリアを通り、沿線にやたら壁面にスプレーの落書きがあっておかしいとは思っていたのだが、これがパリという街の一側面ということになる。

大神さんや巴里華撃団、そして花の都パリにあこがれてパリに来たのに、いきなり出鼻をくじかれた感じになってしまった。物語のモデルとなった場所を訪問し、主人公たちと同じ景色を見て同じ空気を吸って思いを馳せるのが舞台探訪の醍醐味なのだけど、まあ、たまにはこういうこともある！この話をお知り合いのフランス人にしたら、「それはパリ・シンドロームだよ！」と教えてくれて、「これが異文化にカルチャーショックを受けるパリ症候群か」と納得。

この時、イギリスとフランスを訪問したのが初ヨーロッパで、なんとなくヨーロッパに抱いていた謎の憧れや先入観をサクラ大戦3の舞台探訪のおかげで消すことができたことになるので、今思えばよかったのだと思う。この日はその後、輪るピングドラムのポンピドゥー・センター近くで、子供が署名を装って取り囲みスリをする集団に遭いそうになったが、パリ北駅を見て警戒していたので何事もなくやり過ごすことができ、その後も10年近くで様々な国に行ったが幸運なことに未だにクリティカルな被害には遭っていない。

ノートルダム寺院の尖塔や屋根が火災で崩落してしまったので当分の間はサクラ大戦3と同じ姿を見ることはできなさそうであるが、大神さんも眺めたパリを一望できる2つの塔は残っているので、「新サクラ大戦」も発表されたことだし気長にかつての風貌を取り戻す日を待つとよいだろうか。