コロナ禍アンケート結果発表(1/2)
コロナ禍における同人サークル様の実態調査アンケートの結果公開ページ。 2020年内の同人イベント(即売会)参加・新刊頒布予定やイベント当日のサークル参加・一般参加時に気になる点・対策などのご回答いただいています。コロナ禍での創作活動の情報をまとめています。
Contents
コロナ禍下で出展したイベント
新型コロナウイルスの蔓延により日本も緊急事態宣言が発令されたが、その前後に参加したイベントは下記となる。緊急事態宣言前
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その後、4月5日のサンライズクリエイションBSが中止し、だいぶ待たされて11月に手数料を引いて返金。
そして、ご存知の通り5月のコミックマーケット98が中止となり、4月から発令された緊急事態宣言でイベントも開催されずどこにも行けない状態となった。
また、2月に予定されていた香港のPalette Ring 4や7月フランスのジャパンエキスポなどすでに申し込みしていた海外イベントも軒並み中止となった。
緊急事態宣言後
緊急事態宣言後は7月頃からイベント出展できるようになり参加したイベントや感染対策などは以下。3月15日から7月19日に延期された砲雷撃戦江田島が開催2日前の7月17日に中止発表され、この時すでに私は沖縄経由で広島にいたので渡航自体を中止することができず普通に観光するしかなかった。
7月5日に開催を予定していた砲雷撃戦舞鶴は8月10日に延期になり、12月6日に再延期されている。大きな展示場だとコロナ下でも感染対策をすれば貸してくれるケースが多いものの、お役所の運営の地方の会場施設だと、何かあったら困るのでビビって貸してくれないので、地方のオンリーイベントはこういった事情に左右される。
8月2日にサンシャインクリエイション2020 Summerが開催され、一般参加は混雑回避のため入れ替え制となっていた。
8月16日 神戸国際展示場の神戸かわさき造船これくしょん7は、自衛隊の展示はあるけど他の企画展示はなし。感染第二波によりお盆の旅行需要は死んでいたもののイベントはつつがなく開催。しかし、開催後にいろいろありましたね。
8月30日の大田区PiOでアイマスオンリー歌姫庭園22 1日目。こちらは感染対策でサークルの密度を減らすために9月6日の2日に分けて行われていた。
9月6日の超こみっくトレジャー2020。こみトレ名物となっているメイド隊無料ドリンクや落書きコーナーが中止になり、ホールはいつも使わない6号館で1158スペース。
9月22日、陸海空魔合同演習は6月21日から延期となったもので、超高層ビルになった都立産業貿易センターで開催し、感染対策のため1スペースの机は90cm×90cmだったのが150cm×60cmに変更になり直前に180cm×90cmとなって、都産貿名物のデカ机を1サークルで使うという前代未聞の事件になった。
10月18日 COMIC1☆17は東京ビッグサイト南ホールで開催され、久々にビッグサイトでのイベントとなった。冊子カタログの販売は行わずLivepocketを利用した事前販売のQRコードチケット式で、ライブ・コンサートに普段参加しない人にとっては珍しい方法が取られていた。
10月25日 軍令部酒保&砲雷撃戦!よーい!合同演習は東京ビッグサイト西館で開催し、同じ日に例大祭やJ.GARDENもビッグサイトで開催。
11月1日 ベルサール神保町とアネックスのおもしろ同人誌バザール9、これまで一般参加は無料だったのが初めて入場料が1000円になる。
一般参加とサークル数の減少
コロナ禍によって同人誌イベントの一般参加とサークル参加が減っている。単純に新しい生活様式の普及などでライフスタイルが変化して同人誌即売会への需要が減ってしまったのならそれは仕方のないことかもしれないが、家族に高齢者がいたり、医療やお役所、またそれに近い業界に勤めている人は県外移動が禁止されていたり、しにくい空気があったりするので、本人が行きたくても一般&サークル参加できないという事情もある。
近年では地方のオンリーイベントが盛況な例が増えているものの、実際は関東や近畿地方から多くの人が来場しているという事情があるので地域間の移動がし辛いと厳しい。大規模イベントで関東と関西の往来なども同様。
サークル参加については、イベントの申し込みをしたけど当日までに出展を諦めるサークルが多く、8月頃のイベントはたくさんのサークルが欠席して歯抜けのように何もない机が目立ったのはとてもさみしかった。
9月以降は緊急事態宣言解除後に申込が行われたイベントが増えて歯抜け状になるサークルの欠席は徐々に減りつつあるが、目当てのサークルがいなければ一般参加者も来ないといった感じで、会場内の人の数は戻っておらずかつての活気を取り戻すのは当分先になりそう。
サークルのコストが上昇している
一般参加者が減って売上が減少
イベントの来場者が減少したことで、いろいろ話を聞くとイベントや活動ジャンルにもよるけどイベントごとのサークルの売上は半分から1/3くらいに減少している。本を取ってもらう機会が単純に減るので、モチベーションを維持するのが難しくなり、また、コミケではほとんどのサークルが赤字と聞くが印刷費などの経費回収が更に見込めなくなると継続して創作活動ができなくなる恐れが出てくる。
特にコミケでしか新刊を作らないような人は印刷する部数を見誤ると在庫に埋もれてしぬので要注意です。
印刷費の高騰
消費増税や去年の紙不足などで印刷費は数年前から高騰しており、自分がいつも使っている通販印刷のグラフィックで2019年12月に作った本と同じ装丁で値段を調べたら、2020年は期間限定のキャンペーン価格を使わないと値上げされていることがわかり、コロナ禍で印刷の需要が減っているだろうけど、値段はむしろ高くなる印刷所もあるようだった。仮にコロナ禍で印刷会社がたくさん潰れればマニアックな装丁などの多様性が失われ、競争が減って印刷費が上がることも懸念される。
ちなみに、過去に冊子コミケカタログを印刷していた共信印刷が同人誌の印刷を休止したが、コミケカタログの印刷は去年から太陽出版に変更されていたし、共信印刷で同人誌を印刷する人を知人では全く見なかったので影響は少なく、時代の流れで仕方ないという感じだろうか。共信印刷がC97まで作っていたDVDコミケカタログはなくなるかもしれないけどCircle.msによるWebカタログもあるし。
サークル出展費用の高騰
例えば、SDF主催の砲雷撃戦は東京ビッグサイト開催でも6000円くらいだったのが、前述の10月25日のイベントでは1サークル9000円とブース代が1.5倍になった。コミケや日本の同人誌即売会とほぼ同じ形式のイベントで土地の値段が高い香港やシンガポールなどは1万円を超えることもあるが(コミケは申込書とCircle.msへの手数料を含む)、中小のオンリーイベントだと申込代は4000円くらいなところ、いきなり9000円になってしまうと出展の敷居がかなり高くなってしまう。
ちなみに、例大祭は長机半分の1スペースでの申込がなく、机1本の2スペースで12400円のみだったようだ。普段は1スペースでしか申し込んでいない人は広くなる分割高になるけど、普段から2スペースで申し込んでいる人にとっては値下げになるという悩ましい設定だったらしい。
個人主催のおもしろ同人誌バザールでは(野外の大崎で)4000円だったものが、最低6000円となり払いたいだけ募金できるというシステムだった。
とらのあなの大量閉店
コロナ禍によりとらのあなの多くの店舗が閉店しており、委託頒布を行っても以前のように全国の店舗で手に取ってもらう機会が減っているようである。とらのあなはファンティア、pixivはFANBOXといったクリエイター支援サイトをやっており、18禁だとFANZAやDLsiteもあるけど、物理の男性向け同人誌を扱う企業がこのままメロンブックス一強になってしまうと料率などサークルへのサービスが将来的に悪化しそうな気がする。
一般参加も高くなるがVIPパス導入の動きも
コロナによりイベント会場となる展示場に入れる人数を制限する必要が出たため、1人あたりの費用を動きが出て、例大祭は一般参加が2000円だったらしく、一般参加においても敷居が高くなってしまった。また、COMIC1☆17ではついに2000円のアーリーチケットが導入。中国大陸のイベントではサークル入場と同じ時間に入場できるVIPパスを上海COMICUPなどの大規模イベントで見ることができるが、コミケのサークルチケット感覚で一般開場時間前にホールに入ることができる権利を売ることが日本でも受け入れられるか注目となる。コミケではサークルチケットで会場に入った人が外周の大手サークルに並ぶためにホール外に出るシャッター前に列を作る恒例の風景があり、これは四角い列になるので「羊羹」と呼ばれているそうだが、COMIC1☆17のアーリーチケットでも似たような体験ができたので面白かったという知人の話を聞いた。
イベント主催も厳しい
一般参加やサークル出展の費用が上がるのは、当たり前だが同じく厳しい運営を強いられるイベント主催がそれを補填するためである。イベント中止や感染対策で大規模から中小のオンリーまでどのイベント主催も大変なようで、個人主催のオンリーイベントだと感染対策のせいで会場費で大赤字が出たのでしばらく次のイベントが開催できないといった話も聞く。
オリジナル同人誌を扱うコミティアは華麗にクラウドファンディングを成功させていたが、二次創作を扱う同人誌即売会でクラウドファンディングをやるのは社会的な理解を得るのが難しそうなので、政府のGo To イベント的なもので補助されないと当分の間ジリ貧になりそうな気がする。
その他に気がついたこと
男女の意識の差が激しい
イベント会場や主催により感染対策については決まりやガイドラインが示されるがものの、内容を十分に把握していないサークルや一般参加も多いので遭遇してしまうと対応に苦慮することもある。最低限の決まりは守らないといけないけど、気合を入れて対策しても結局は意識の低い人に合わせざるを得ないのでなかなか難しい。コロナ対策方法については男女でかなり差が出ており、女性サークルだとビニール飛沫防止パーテーションを設置する率が高いけど男性はそうでもないという違いが見られた。
今のところ特に大きな問題は起きていないけど、コミケといった大型のオールジャンルイベントではこの辺の意識の違いで何か軋轢が起きそうな気がする。
非接触決済は日本ではやっぱり無理なのか
新型コロナウイルスの感染予防のため、同人誌即売会でも非接触決済の需要が少しは高まったのではないかと、試しにPayPayを導入してみた。PayPayで決済すると前のイベントで頒布したコピー誌をおまけでつけるというキャンペーンをやってみたけど、告知とディスプレイ不足もありほとんど現金でやりとりする結果となった。電子決済はどうしても時間がかかるので現金を差し出した方が速い日本の同人誌即売会では普及するのはやはり難しそうである。現金を管理、持ち運び、入金する手間が減る利点があり、アリペイやWeChatPayで決済する中国みたいな体験を日本でもやってみたかったけど叶わぬ夢となりそう。
コミケという締切がないのが何よりつらい
2020年5月のコミックマーケット98は中止となり、12月のコミックマーケット99は2021年5月に延期となったことで、コミケは時期的に2回分開催されないこととなった。同人誌即売会は少しずつ戻ってきたものの、コミケは未だに帰ってきていない。主にコミケを中心に新刊を出している知人と話すと、やはり「コミケという巨大な締切を失った」のが大きいというのが話題になる。
コミケという最大のお祭りを目指して本を作るという高揚感が得られるのはもちろんだが、締切を設定して自らにケツを叩かないと何も作れないという同人作家は多いのではないだろうか。同人誌とは好きだから勝手に作っているものであるはずなのに。
明るい兆しもあるので今後を見守っていきたい
同人誌即売会の本質は、「お祭り感」「同志との交流」であると個人的に思っている。創作活動はWebサイト、SNS、動画共有サイトなどの普及でオンライン上で無料でいくらでもできるようになったので、物理の紙の本やオフラインのイベントにこだわる必要なんてもはやないのである。
それでも、最後の最後まで内容を詰めて、一度刷ってしまうと修正が原則できないので校正&校閲にも気合を入れてギリッギリで入稿して、イベント当日にワクワクしながらダンボールを開けて紙とインクの匂いをかぐ。
ドキドキしながら机の上に本を並べて開場を待ち、自分の「好き」という気持ちが他の人にも理解されたと思えた時の喜びは未だにオンライン上では味わえない至高の体験と言えるだろう。たとえ赤字でも紙の本を作り続けるというのは大なり小なりこういう考えの人が多いからではないだろうか。
その場で同志と会うことができるのもオフラインイベントならではとなり、最初はコミケで半年に1度会って少し話すだけだった人と寝食共にしたり家族ぐるみの付き合いに発展することもあったりする。創作によって輪が広がるのも醍醐味の1つ。
コロナ禍によって一度は身動きが取れなくなり、7~8月頃から再び同人誌即売会は開催されるようになったものの、現状は上記の通りかつての盛り上がりには程遠いと言える。
しかし、おもしろ同人誌バザールでは有料になったにも関わらず賑わいが戻るなど明るい材料もあるので、現状は様々な困難が伴うものの引き続き自分の「好き」を表現するという活動に取り組みつつ界隈の様子を見ていきたいと強く思う。